「テーラー 人生の仕立て屋」日本のリアル移動式テーラーはどう見た?「考えていることもやっていることもほとんど一緒」
2021年9月6日 15:00
ギリシャで移動式のスーツの仕立屋を営む主人公が、初めてのウェディングドレス作りに奮闘する姿を描く「テーラー 人生の仕立て屋」(公開中)。長崎で移動式テーラーとして活躍する「LECRIN」の江頭知裕さんが本作を鑑賞し、共感した点や本作の魅力を主人公ニコスと同じ“テーラー”目線で語った。
江頭さんは、キャンピングカーを改装した移動車でお客様のもとへ行き、デザイン、採寸、仮縫いまでを担当している。予約などの詳細はホームページ(https://www.lecrin-mens.com/)で確認できる。
主人公のニコスと同じように「待っているだけじゃ仕事はこない!」と思ったからです。以前からお客さんの自宅や事務所などに出張はしていましたが、家にあがってもらうことに抵抗があるというお声をいただくこともありました。そこでキャンピングカーを移動店舗にすることを思いつき、クラウドファンディングで集めた資金でボロボロの中古車を改装するところから環境を整えて、今のスタイルで仕事を始めたんです。長崎をベースにしながら関西などにも出かけています。
同じテーラーの立場から見てもとてもリアルで、伝統的なスーツ作りについて監督がかなりリサーチを重ねてこの映画を撮ったんだろうなと思いました。大まかに言うとデザインや生地選びから始まって採寸して型紙を作り、仮縫いから本縫いへと進めていくのですが、僕が大事にしているのは採寸です。ニコスも仕事のときはいつも黄色いメジャーを肩から下げていますよね。身長や体重が一緒でも手の長さや体型は一人ずつ違いますので、採寸によって仕上がりの9割が決まると考えています。
オーダースーツは安いものではないからと、太って着られなくなることを心配して出来上がる頃には体重を落としてくる方もいらっしゃるんです。採寸したときの体重と体型で一番かっこよく見えるように作りますので、ぜひそのままのスタイルを維持して完成をお待ちください、と伝えています(笑)。
ニコスと考えていることもやっていることもほとんど一緒だったので、最初から最後まで共感しながら入り込んで観ました。その中でも印象的だったのは、お客さんの笑顔。僕自身もスーツを通してお客さんの人生に寄り添って幸せにしたいと思っているので “人生の仕立て屋”というタイトルもぴったりだと思います。
インタビュー・文 細谷美香(映画ライター)
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