映画監督・原將人の自宅火災のてん末を映画化 「焼け跡クロニクル」クラウドファンディング開始

2021年9月5日 07:00


原監督は、家財道具の全て、保管していた過去作品のフィルム、映画機材を焼失し、火傷を追って入院することになった
原監督は、家財道具の全て、保管していた過去作品のフィルム、映画機材を焼失し、火傷を追って入院することになった

映画監督・原將人(「初国知所之天皇」「20世紀ノスタルジア」「あなたにゐてほしい Soar」)の身に起こった“自宅火災”のてん末をドキュメンタリー映画化した「焼け跡クロニクル」(https://youtu.be/PDM82bvAXRo)のクラウドファンディングが、「防災週間」にあたる9月5日よりスタート。11月30日まで募集が行われている。目標金額は300万円。集まった資金は、映画の完成費用、全国での劇場公開に向けた配給・上映費用として使用される。

2018年7月、京都・西陣の原監督宅が、火災によって全焼した。出火原因は不明。家財道具の全て、保管していた過去作品のフィルム、映画機材を焼失し、原監督は火傷を追って入院。残された家族は公民館へ避難することになった。明日着る服も、帰る家もなく、映画監督の命である作品は燃え、生活するのに必要なものを何もかも失った。

火事当日からの10日間を、原監督のパートナー・真織氏が記録。本作は、火災当日の模様とゼロからの再起を、当事者自らが記録したドキュメンタリーとなっている。

クラウドファンディングは「MotionGallery」(https://motion-gallery.net/projects/yakeato-movie)で実施中。リターンとして「全国共通特別鑑賞券」「焼け残った原將人作品の8ミリフィルムの現物」「原將人、真織監督からの年賀状」「2022年カレンダー付きマスコミ用プレスシート」「エンドクレジットにお名前掲載」「オンラインイベント参加券」「オンライン打ち上げ参加券」などが用意されている。

なお、山田洋次監督、瀬々敬久監督、谷川建司氏(映画ジャーナリスト/早稲田大学政治経済学術院客員教授)、四方田犬彦氏(映画誌・比較文学研究)が支援のコメントを発表。詳細は、以下の通り。

山田洋次

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原將人は転んでもただでは起きない。

自分の住居が火事になるということはそう誰もが経験することではない。原君はその不幸に遭遇したが、燃えさかる家に飛び込んで火をものともせずに、撮りためた大切な八ミリのフィルムを夢中で運び出した。そして顔や腕が火傷だらけの痛々しい姿で傷ついたフィルムを編集し始める。その結果、なまなましく焼け焦げたフィルムを通して彼と愛する家族の歴史が鮮烈に浮かび上がることになる。

ドキュメンタリー作家の業が生み出したとも云うべきこのユニークな作品が劇場で上映されることを、彼の昔からのファンの一人として切実に願ってやまない。

瀬々敬久

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僕は原さん、原將人さんを応援しないわけにはいきません。

原さんの作品を初めて見たのはテレビでした。「おかしさに彩られた悲しみのバラード」僕がまったく見たことがないような映画でした。とてつもなく自由で、めちゃくちゃだけどチャーミングで、それでいて感情のある表現。うわ!こんな映画がこの世に存在するんだ!それ以来、自分で映画を作ることが出来ないかと思い立ち、僕自身も行動に走りました。

そして、伝説の「初国知所之天皇」。これが見たくて見たくて自ら原將人全作品上映会を企画して自主上映を行いました。そのとき見たのは80年代初期の16ミリ映写機二台を使った二面マルチヴァージョン、とにかくこれもショックで、ああー、もう!なんだよ、なんだよ! なんでこんなことが出来るんだよ!という感じでした。

そして今回、そんな原さんの71歳にしての新作。とにかく、原さんの新作を見届けたい。いま、なんだか無性に危機感を抱きながら、そう思っております。そんなわけで、原さんの新作を応援したい、応援します、応援しましょう、なのです。

【谷川建司】

この映画には、互いが互いを思いやり、困難を克服しようとする一つの家族の強い意志が映像のどの瞬間にも満ち溢れている。突然の被災、周囲の励ましや助力を得ての困難の克服、そして再生へと至る姿が克明に記録されているのみならず、様々な自然災害で被災した数多くの人々にとっても希望の光を見出すヒントとなるに違いない。

映画の完成へ向けて支援することは、誰かを励ますというだけでなく、逆に自分自身が励まされるチャンスを得ることでもあるはずだ。

四方田犬彦

2018年、原將人は自宅の火災により、これまで撮ってきた多くのフィルムを喪失した。彼は燃え盛る火の中、編集中の作品とデータの入ったパソコンとハードディスクを取り出すのが精一杯で、このときはさすがに撮影することはできなかった。しかし燃え崩れた家のなかから残骸と化したフィルム缶を発掘し、作業のいっさいを撮影した。われわれがここに観るのは、編集された映像の記録である。

映像が滅び、その灰燼のなかから新しい映像が誕生する。死と再生の劇がここにはある。

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