“悪魔の契約”で背中にビザを彫り、アート作品になった難民の男の結末は?「皮膚を売った男」衝撃の予告編
2021年8月27日 12:00
第93回アカデミー賞の国際長編映画賞にノミネートされた「皮膚を売った男」の予告編が披露された。映像には、シリア難民のサムが現代アートの巨匠と“悪魔の契約”を交わし、背中にタトゥーを施され、アート作品として取引されるようになる数奇な運命が映し出されている。
予告編は、国に帰ることも海外に逃げることもできないサムが世界的な芸術家ジェフリーと出会い、「私があげよう、自由に飛べる絨毯を」「(君の)背中が欲しい」と、摩訶不思議な言葉をかけられるシーンで幕を開ける。海外で離ればなれになっていた恋人と会うため、契約書にサインをしたサムに課せられた契約――それは、自らがアート作品になることだった。
背中一面に「VISA」というタトゥーを施されたサムは、アート作品として裕福な生活を送るようになり、恋人とも再会し、世界中から注目される存在に。しかし親戚から罵倒され、オークションに出品されるサムの姿に、「サムは本当に恵まれた側の人間になれたのだろうか」というナレーションが冷たく重なる。精神的に追いこまれたサムが叫び、頭に拳銃を突きつけられる衝撃のカットが続き、予測不能の結末へと導かれていく。
本作は第77回ベネチア国際映画祭のオリゾンティ部門でプレミア上映され、主演のヤヤ・マヘイニが男優賞を受賞。そのほか第26回リュミエール賞の合作賞や、第31回ストックホルム国際映画祭の脚本賞などを獲得し、第33回東京国際映画祭でも上映され、話題を呼んだ。米批評家サイト「Rotten Tomatoes」では、満足度93%(8月25日時点)の高評価を獲得している。
マヘイニのほか、モニカ・ベルッチ、ケーン・デ・ボーウが共演。「Beauty and the Dogs」(2017)でカンヌ国際映画祭のある視点部門で音響賞を受賞し、アカデミー外国語映画賞のチュニジア代表に選ばれたカウテール・ベン・ハニア監督がメガホンをとった。作品を通して、「もしも生身の人間が芸術作品となり、売買の対象になったら」という設定のもと、移民、難民問題をめぐる偽善や現代アートに関する知的欺瞞を風刺する。
「皮膚を売った男」は、11月12日に東京のBunkamura ル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開。