永野芽郁、“救われた”映画への感謝「私も誰かの心がふっと軽くなる映画が作れたら」
2021年8月7日 10:00
松竹映画の100周年を記念し、人気作家・原田マハ氏の小説を山田洋次監督が映画化した「キネマの神様」(公開中)。本作で初めて山田組に参加した永野芽郁は「最初から最後までなんて温かい映画なんだろうって思います」と愛着をにじませる。山田監督との撮影中のエピソード、そして永野自身救われたという“映画”への思いを聞いた。
本作は、かつて撮影所で働き何よりも映画を愛していたが、今や家族にも見放されたダメ親父のゴウを主人公に、時代を越えて繰り広げられる愛と友情、家族の物語をつづる。主人公・ゴウの過去と現代を菅田将暉と志村けんさんが二人一役で演じる予定だったが、志村さんが2020年3月29日に急逝。志村さんの遺志を継ぎ、沢田研二が現代のゴウを演じた。永野は若きゴウらが働く撮影所の近くの食堂の看板娘で、やがてゴウと夫婦になる淑子を演じた。
山田監督作品に初参加となったが、当初は嬉しさと共に不安も大きかったそう。
「いつかはご一緒したいと思っている方がたくさんいらっしゃる監督なので、嬉しさもありましたが、私でいいのかなという不安も大きかったです。私自身、おじいちゃんが山田監督の作品が大好きでずっと作品は見てきましたし、少しでも自信をつけて現場に入ろうと思いましたが、監督の求めていることをちゃんと出せているのか、撮影期間中はずっと不安でした。それでも、完成作を見てからは『皆さんに見てもらうために自信を持ってお話ししていくしかないな』とようやく切り替えられました」
何度も出てくる“不安”という言葉。永野にとっては、自身を成長させるために必要な要素であり、不安があるからこそ周囲の支えも実感している。
「これでいいかって思えるところに私はまだ達していないので、常にこれでよかったのかなって心配になったり、不安になったり、自信がなくなって……。でも、また自信を出させてくれる誰かの言葉や作品のおかげで今まで続けてくることができたので、その不安はきっとこれからもずっと持っているんだと思います」
山田監督の現場の様子を聞くと「プロフェッショナルの集まりでした。どの部署の方もすごく丁寧に的確にお仕事をされていて、山田監督が指示をしなくても、みんなが感じ取って動いていて。今までもこうやって作ってきたんだろうなという歴史を感じました。現場の空気は穏やかさも常にあって、それも監督が持っていらっしゃるパワーなんだなと思います」と驚いたそう。「最初は監督に怒られたらどうしようと思っていたのですが、朝に必ず『おはよう、元気? 体調はどうですか?』って聞いてくださって、本当に優しくしていただきました。監督とお話しする時間が増えていく嬉しさは、確実に映像に出ていますね(笑)」と笑顔を見せる。
現代の淑子を演じた宮本信子とは、本読みの際に山田監督から「2人は似ているね」と指摘されたそう。宮本の細かい仕草も真似て演じ、劇中では2人の姿が重なって見えてくる。
「宮本さんの表情や仕草を真似できたらいいなと思っていたのですが、本読みの際に見ていたら、宮本さんが手を握っていらっしゃいました。山田監督やプロデューサーさんが淑子の癖を共通させたいとおっしゃっていたので、その仕草を意識してやっていました。あと、宮本さんの笑顔が本当に素敵なので、私もできるかぎり優しい温かい笑顔を真似できたらなと思っていました」
現代のゴウと淑子の姿には、「なんでこんなに素敵なんだろうって思いました」と憧れたといい、「歳を重ねたらゴウちゃんってこうなるんだなって、自然に頭のなかでスライドができて、なぜか私も自然に宮本さんが演じた淑子にスライドができました。自分たちの未来を見ているような気持ちでした。沢田さんが演じられたゴウちゃんも、ダメダメだけれど見捨てられないパワーがありました」と魅力を明かす。
最後に、本作にちなんで映画作りの醍醐味を聞くと、自身の経験を踏まえて映画への感謝と愛情を語ってくれた。
「映画は時間をかけて撮っていくので、凝縮されたエネルギーが放出されるような感覚が映画作りの魅力だと思います。私も映画を撮る側の一人ですが、映画に救われたことがたくさんあります。言葉にできないけれど自分の気持ちが落ち着かない日や、お芝居をすることに自信がなくなったときに映画を見ると、一つの作品の中で人生を生きている人たちってこんなにかっこよく見えるんだなとか、誰かのセリフに救われるとか、そういう経験があったから今もこの業界で映画を作りたいって思えています。私も誰かの心がふっと軽くなる映画が作れたらいいなって常に思いますし、これからも映画界に携わっていきたいです」
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