【「ミアとホワイトライオン 奇跡の1300日」評論】「世界はきっと変えられる」という思いが胸に響く、CGなしの奇跡の物語
2021年6月26日 23:00

100年前のアフリカでは25万頭のライオンが生息していたが、今では9割減少し、確認されたのは約2万頭未満で、絶滅の危機にあるという。百獣の王と呼ばれ、強いイメージがあるから、まさか絶滅の危機にあるという実情を知っている日本人は少ないのではないだろうか。この割合で減少が続けば、20年後には姿を消してしまうというのである。
「ミアとホワイトライオン」は、少女ミアとホワイトライオンの友情と家族の再生が主軸に描かれるが、実は南アフリカの社会問題となっているトロフィー・ハンティングの一種“缶詰狩り”がもう一つの重要なテーマとなっている。日本ではあまり聞き馴染みのないトロフィー・ハンティングとは、トロフィー(獲物の角などから作られる狩猟記念品)や娯楽の獲得を目的とした狩猟のこと。そして“缶詰狩り”とは、人工的に増殖させた野生動物を囲いの中で狩るもので、アフリカでは産業として確立されているのだ。
ライオンファーム経営のためにロンドンから移住し、南アフリカの生活に馴染めなかった11歳のミアが、生まれたての頃から友情を育んだホワイトライオンを必死に守ろうとする姿と、家族の葛藤と再生の物語は、動物ものとして、ファミリー向け映画としてシンプルにお薦めできる。また、日本から遠く離れた地の社会問題や野生動物の実情を知ることができる作品としても、一見の価値ある作品だ。
しかも、この映画のもうひとつの見どころは、3年以上かけてCGなしで撮影されたというリアルな映像で、それが作品に説得力を与えている。たった3年で立派に育ったホワイトライオンの行動は野生動物そのもので危険。CGや合成技術などを駆使して撮られたものと思いきや、実は時間をかけて少女とライオンのリアルな関係を築き撮影されたもの。野生動物たちの迫力や大自然の圧巻の美しさは、CGでは表現し得ないことを改めて知らしめてくれる。監督が多くのドキュメンタリー作品を手掛けてきたというのも納得で、「イングロリアス・バスターズ」のメラニー・ロランがミアの母親を演じている。
ライオンの減少は自然の摂理や淘汰だけが原因ではなく、その地の風習や歴史、観光産業や社会問題、人間の身勝手な行動、大人の事情などが深く影響している。そんな状況を父親は家族のためにと諦めてしまっていたが、思春期の娘の純粋で勇敢、想像を超える破天荒な行動により目を覚ますことになる。ミアの「諦めない」「世界はきっと変えられる」という思いが、胸に響くに違いない。この世界で生きるとは、命の大切さとは、大自然や野生動物といかに共生していくか。そして改めて家族とは何かを見るものに問いかけるメッセージが、深い感動を呼ぶ。
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