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【「Away」評論】引き算の美学で描く少年と小鳥の冒険譚、ゲームファンにもお勧め

2021年6月19日 23:30

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「Away」
「Away」

パラシュートで島に不時着した少年が、正体不明の黒い影から逃れながらオートバイで自然のなかを駆けぬけていく。4つの章で構成される約75分の本作にはセリフが一言もないが、シンプルな3DCGアニメーションを効果的に使った映像美で飽きさせずに楽しませてくれる。

少年と一緒に旅する黄色い小鳥は、絵本から飛び出してきたような愛らしい姿とユーモラスなふるまいで、もう1人の主人公と言いたくなるぐらいの大活躍をみせる。そのほか、象、カメ、黒猫など物語を彩る動物たちの姿を見ているだけで楽しい。

ラトビアの新進クリエイター、ギンツ・ジルバロディス監督が3年半かけてほぼ1人で制作した本作には、引き算の美学がつらぬかれている。少年の造形には影がなく、目をつむるとのっぺらぼうに見えるぐらい輪郭線を省略している。平面的なデザインが全編イラストレーションが動くような感覚を生み出し、美麗な自然描写とあわさって、湖面に空が映る「鏡の湖」のシーンなど絶景写真のような幻想的な場面をつくりだしている。

3DCGアニメの特性が存分に生かされているのが長回しのカメラワークで、自然の雄大さや少年の心情を代弁する浮遊感のあるカメラの動きには「ゼロ・グラビティ」で知られるアルフォンソ・キュアロン監督の作品にインスピレーションを得ているという。iPhoneを実際に揺らした動きをとりこむアプリを使うことでリアルな手振れ感のある動きをとりいれ、映像への没入感を高めている。

日本版公式サイトには、ゲームクリエイターの上田文人(「ワンダと巨像」)、小島秀夫(「DEATH STRANDING」)の推薦コメントが寄せられ、ジルバロディス監督自身も日本のアニメ・ゲームや「風ノ旅ビト」「INSIDE」などの海外インディーゲームの雰囲気に影響をうけていることを公言している。ここで挙げたタイトルにピンとくる方は、きっとこの作品の世界観に魅了されるはずだ。

(五所光太郎)

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