【「ペトルーニャに祝福を」評論】性差別を題材にした風刺劇から時代性を突き抜けた寓話へ。至福のラストを見逃すな!
2021年5月15日 09:00

原題は「神は存在する、彼女の名はペトルーニャ」。32歳のパラサイト・シングルのペトルーニャ(ゾリツァ・ヌシェバ)が神!? かどうかは別として、気鋭のテオナ・ストゥルガル・ミテフスカ監督は、東方正教会の十字架をめぐってペトルーニャが巻き起こす騒動を、イエス・キリストの受難になぞらえて描いている。
最悪の就職面接の帰り道、教会の儀式に巻き込まれ、男性のみ取ることが許されている「幸福の十字架」を思わずゲットしたペトルーニャ。帰宅した彼女が、裸の胸の上に十字架を載せ、磔刑にされたキリストと同じポーズをとる場面は、彼女の受難の始まりを象徴的に物語っている。味方だったはずの親友に見放され、家に押し掛けてきた警官に脅され、連行された警察では、集団で詰めかけた男たちにどつかれ、水とツバキを浴びせられる。キリストが受けてペトルーニャが受けなかった仕打ちは、鞭打ちくらいだ。
一方、ペトルーニャを捕えた警察署長や司祭も、彼女と十字架をどう処分するかで頭を悩ませる。というのも、彼らには、なぜ女性が儀式に参加できないのか、なぜペトルーニャが十字架を返さなければならないのか、筋の通る説明ができないからだ。これは、キリストを捕えた祭司長や長老たちが、「キリストを何の罪に問えるのか?」で四苦八苦した状況に似ている。
結局のところ、ペトルーニャが期せずして挑んだのは、伝統と名付けた既得権を脅かす存在になった個人と、既得権を死守する集団との闘いだ。が、賢い彼女はふと立ち止まる。そもそも、この既得権は、闘うに値するものかどうか? と。その答えをみつけた瞬間、職も恋人も希望もないあきらめモードの人生を歩んでいたペトルーニャは、復活後のキリストさながらに、まったく別の神々しい生き物に変貌を遂げる。同時に、映画自体も、性差別を題材にした風刺劇から時代性を突き抜けた寓話に昇華する。至福のラストを見逃すな!
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