過酷な監禁生活を生き延びた実話を映画化した「ある人質」 本人はどう見た?
2021年2月28日 12:00
IS(イスラム国)の人質となりながら、奇跡的に生還したデンマーク人写真家ダニエル・リュー氏の実話を映画化した「ある人質 生還までの398日」(公開中)。実際に体験した張本人であるリュー氏が、本作を鑑賞した感想を語った。
原作は、ジャーナリストのプク・ダムスゴーが書き上げた「ISの人質 13カ月の拘束、そして生還」(光文社新書刊)。内戦中のシリアを訪れた24歳の写真家が、ISに誘拐され、1年以上も過酷な監禁生活を生き延びたという実話を映画化した。
本作を鑑賞したリュー氏は「初めて見たときには少し奇妙な感じがして、実はあまり好きではなかったんです、自分の話なのだけれど、出てくるのは僕ではないので違和感があったり、また映画はフィクションで製作陣の手によるものなので、これはどうしてこうなっているのだろうと思ってしまったり」と告白。5回ほど見てから「理解し受け入れられるようになりました。素晴らしい作品だと思いますし、フィクションではあるけれど、多くの方が見て感動したと言ってくれたのは良かったです」と振り返る。
主演を務めたエスベン・スメドについては「最高の演技をしてくれました。最初見たときは変な感じもしましたが、エスベンがこの役を演じるために、食事を減らしたり、寒さの中で凍えながら撮影をしていたのを知っているし、エスベンの持つ100%の力を発揮してくれたと思っています。そして彼とはとても良い友人になりました」と明かす。
日本では、シリアで囚われた日本人ジャーナリストの安田純平氏が「自己責任だ」とバッシングを受け、本作にイベントに登壇した際にも自己責任論について言及していた。
リュー氏の場合は「本を出したときに、それを読んだ多くのデンマークの人たちは、僕が準備万端で出かけて行ったことや、なぜシリアに行ったのか、意図をわかってくれたと思います。もし紛争地域に自分のために行くということであったならば、自分の面倒は当然自分でみるべきだと思うけれど、ジャーナリストやフォトジャーナリストの場合は自分のためだけに行くのではないのです」と説明する。
本や映画をきっかけに多くのメッセージを受け取ったといい、「皆さん、違う部分に感動してくれたのが印象的でした。例えば外交のことをもっと考えなければならないと感じてくれた人、あなたがこんなにも辛い目に合いながらも生還できたことを考えれば、試験なんてたいしたことないから前向きに臨みますという人など、僕の話を色々な形で感じ取ってくれたことが嬉しかったです。それもあって、この自分の体験をもっと伝えていこうという気持ちにもつながりました。この物語が自分のことよりもっと大きな物語になっているのかなと思うし、伝え続けていこうと思っています」と話していた。
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