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【新春特別対談Vol.2】井浦新×高良健吾、全国の映画館を思う

2021年1月3日 12:00

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映画館への思いを明かした井浦新と高良健吾
映画館への思いを明かした井浦新と高良健吾

2020年は新型コロナウイルスの感染拡大により、世界中の人々が日常生活において大きな変化を目の当たりにした。映画業界も封切りを予定していた新作は軒並み公開延期となり、政府による緊急事態宣言を受けて全国の映画館が休業を余儀なくされたことは記憶に新しい。デビュー以降、常に映画、映画館と真摯に向き合ってきた俳優の井浦新高良健吾にこの1年について、そしてこれからのことを語り合ってもらった。(取材・文/編集部、写真/きるけ)

Vol.1では、政府の緊急事態宣言を受けてあらゆる活動が休止を余儀なくされたとき、ふたりが何を考えていたのかを明かしてくれた。今回は、ふたりにとって“ホーム”ともいえる映画館を議題にしてみた。口火を切ったのは、井浦だ。

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井浦「僕らが映画を作れたとしても、この半年で起きた全国の映画館の状況が心配です。シネコンも大変だったけど、東京を含め地方の単館系映画館が心配。SNSで繋がれるところとは繋がって、全国のミニシアターの皆さんがあげている悲鳴などをなるべく拾うようにしています」

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その活動の一環として、女優の渡辺真紀子、俳優の斎藤工と共に始めた、映画館と映画を応援するキャンペーン「ミニシアターパーク」(http://minitheaterpark.net)がある。全国の劇場名を様々な映画人たちが呼んでいく応援動画「See you at theater!」では、映画館で働く人々に元気を届けようとしている。

井浦「いわゆる伝わりやすいヒット作として紹介されているものは観に行くきっかけがあったとしても、それ以外の良作との出合いの機会がどんどん遠のいてしまっています。何が出来るだろうかと常に考えていますが、まずは今まで通り、今まで以上にという気持ちです。俳優という仕事にちゃんと取り組みながら、地方のミニシアターまでもが一緒にこの苦難を乗り越えていけるような状態であればいいなあと感じています。エンタメ界って、意外と横の繋がりが薄いんです。映画館同士も繋がってこなかった。そういうことも、どんどんやっていった方がいいんだなと思いました。いつも通り、いつも以上に、今までやらなかった思考、行動を繋いでいく必要があるんじゃないかなと感じています」

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昨年は、NetflixやAmazon Prime Video、Disney+といった配信プラットフォームが勢いを増したことは言うまでもない。高良は、映画館で鑑賞することの意義を考え直していたという。

高良「外に出られない状況になって映画を家でたくさん見たし、そういう人は増えたと思います。映画館が営業を再開して、『映画を見たい!』と思っていた人たちで劇場がもっと潤うかと思ったら、そうでもなかった。家でも観られるという考え方はもちろん理解できますが、映画館に行く人との差って、『早く見たい』『待てない』ということなんでしょうね。僕らは、関わる作品を『映画館で早く見たい! 待てない!』と思ってもらえるように、どうやって持っていけるかだと思うんです。それを考え続ける経験は今年だけじゃなく、来年、再来年へと繋がっていくはずなので、僕も考えていくつもりです」

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自粛期間中、日本のエンタメ業界でも何度となく悲しいニュースが続いた。高良は、「人生は1回しかない」という思いを新たにしている。

高良「昔から残っている言葉ですが、人生は1回しかない。自分はどうやってこの世の中をサバイブしていくのか。自分を支えてくれるのは、『人生は1回きり、何を選択してもそれぞれの生き方として他人にジャッジされる必要はない』と思ったとき、やる気が出るんです」

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また、現在のエンタメ界を取り巻く「純粋な作品づくりではなくなってきている部分」を、ふたりは憂いている。

井浦「今までは通用してきたから変える必要はないし、フォーマットに則ってやってきたこともあるんでしょうが、歪んでしまったシステムは一度、崩壊してもいいんじゃないかと感じることがあります。色々なことが、シンプルになるタイミングなんじゃないかと。映画って本来、作らなきゃいけないから作るもののはず。その素直な動機がどこかにいっちゃってるんじゃないかな。すぐに変えられるとは思っていませんが、これまでの幻想を一度手放すいいチャンスじゃないでしょうか。以前のように、なんでもかんでも作っていられない状況ですから。じゃあ本当に面白いものを作ろうよ! と製作サイドとさらに情熱を注いで、研ぎ澄ませていった方がいいですよね」

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高良「これまで作り過ぎていましたよね。この状況だからこそ、たくさん本数を撮れないって、もしかしたら前向きにとらえられる流れなんじゃないですかね。3本にかけていた時間と予算を1本に集約すれば、作品のレベルは確実に上げられると思います。そういう流れが出来れば、何かが変わるんじゃないかな……」

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井浦「ちょっと不健康だったんだろうね。業界全体が今一度、見直す良い機会じゃないでしょうか。今まで通りにやる必要もないわけですし、大きな変化の時が訪れて、みんなで『いっせーのせ』で変えられるタイミングなんてそうそうないですから。去年は、混乱しながら試行錯誤していったなかで、面白いものを作っていれば人は動くということも、コロナ禍で分かったこと。宣伝されたものだけが流行るわけではなく、口コミで満席になるミニシアターも現実としてあるわけですから。そういう力のある作品を、各現場が作っていけたらいいなあと思います」

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高良「ミニシアターで上映されている作品は、世界を向いているような気がするんです。マーケティングを重視して、ターゲットを絞ったり年代を意識した作品も大事かもしれないけれど、アジア各国の面白い作品に触れたとき、『この作り手たちは自国を見ていないなあ、世界に向けて発信しようとしているんだな』と感じるんです。そういう考え方が、日本でもミニシアター系に偏るのではなく、変わっていくんじゃないかなという気がしています。30代前半の監督とかプロデューサーで、そういう思いを口にしている人が意外と多くて、上と戦おうとしている人たちが多くて面白いなあと感じることが多いんです」

(Vol.3へ続く)

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執筆者紹介

大塚史貴 (おおつか・ふみたか)

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映画.com副編集長。1976年生まれ、神奈川県出身。出版社やハリウッドのエンタメ業界紙の日本版「Variety Japan」を経て、2009年から映画.com編集部に所属。規模の大小を問わず、数多くの邦画作品の撮影現場を取材し、日本映画プロフェッショナル大賞選考委員を務める。

Twitter:@com56362672


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