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「グロテスクな瞬間さえも、すべてに光が」鬼才ロイ・アンダーソン監督が絵画から着想を得る理由

2020年11月18日 17:00

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画像1(C)Studio 24

2019年・第76回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(最優秀監督賞)受賞作、スウェーデンの奇才ロイ・アンダーソンが、時代も性別も年齢も異なる人間の悲喜劇を描いた「ホモ・サピエンスの涙」が公開された。驚くべきこだわりの撮影方法で作られた圧倒的な映像美が話題の本作は、マルク・シャガールをはじめ、イリヤ・レーピン、オットー・ディックスの作品など、実在の絵画からインスピレーションを受けていると公言するアンダーソン監督が、今作を語った。

──これまでの作品にも共通していますが、今作では、様々な絶望と希望が描かれます。

私の映画のメインテーマは、人間の脆(もろ)さです。脆さを見せる何かを創作することは、希望のある行為だと思っています。なぜなら、存在の脆さに自覚的でいれば、自分の持つものに対して丁寧でいられるからです。私は、常に存在の美しさ、生の美しさを強調したいと思っています。しかし、そのためにはコントラストが必要で悪い一面や残酷な一面も見せなければなりません。例えば、美術の歴史を見ると多くの絵画は非常に悲劇的です。しかし、それらを描いた芸術家たちは、残虐で悲しい風景を描くことでエネルギーを変換し、希望を生み出してきたのです。

──これまでのどの映画でも絵画から着想を得ていらっしゃいます。

私は、その力強さゆえに新即物主義のアーティストたちに興味を持っています。彼らは並外れて鋭く、きめ細かい。すべてに焦点があたっていて、明瞭です。人生のグロテスクな瞬間さえも、すべてに光が合っているのです。私は、これだけの明晰さは映画の歴史からは見つけることができません。

──ナレーターの存在は、「千夜一夜物語」の語り手シェエラザードから着想を得ていると聞きました。

当初は男性や、自分の声でも試してみましたが、最終的には女性を選んだ方が面白いと気づきました。彼女の声は、妖精のようで、賢く、不死でさえあるような感じがします。今回、初めて自分の映画にナレーションをつけました。私にとって新しいことです。「二十四時間の情事(ヒロシマ・モナムール)」(59/アラン・レネ監督)の声からもインスピレーションを受けました。あるシーンでは、観客が見ているものを同じタイミングで説明したりします。私はそれをとても気に入っています。

──すべてご自身のスタジオで撮影しているのですか?

はい。ノルウェーで撮影をしたドイツ軍の行進シーンの外観1つ以外は。

画像2(C)Studio 24
──本作で最も技術的に大変だったことは何ですか?

空を飛ぶカップルのシーンです。都市全体が巨大なセットになっていて、ケルンの街の模型を建てるのに、1カ月かかりました。街は1/200の縮尺で、聖堂は50cmの高さです。

──このシーンに込めた思いを教えてください。

美しい街が爆撃を受けて破壊されてしまったという、歴史のおそろしい回想です。けれど、そうした悲劇にもかかわらず、人生は続くということを私は見せたかった。愛、優しさ、官能は存在し続けます。破壊された都市の上で、こうした一面を見せることが重要でした。

──本作には、永遠性が感じられます。

はい、永遠であることに限りなく近いシーンを私は作りたかったのです。9月だったり、雪が降っていたり…歴史的なシーンがあったとしても、永遠性の感覚を残したかった。私は絵画──私たちが生きる時代に私たちに語りかけ、200年前、或いはもっと前の時代の人々にも語りかけていた芸術から、大きな影響を受けています。それらは、私たち人間は年齢や時代を超えて皆似ている存在なのだということを教えてくれます。タイトルにある“無限”は、人間の存在についての“果てしなさ”を示しているのです。

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