山田孝之、俳優志望の子どもたちに徹底指導! 「ACT芸能進学校」特別授業に密着

2020年11月17日 12:00


特別講師・山田孝之の授業に密着!
特別講師・山田孝之の授業に密着!

「演劇教育で子供の人生を豊かにする」をコンセプトとしたオンライン・アクターズ・スクール「ACT芸能進学校(=A芸)」(https://act-college.com/)の特別ワークショップ「interACT(読み方:インタラアクト)」が、11月11日に開催。特別講師・山田孝之による授業を、映画.comが密着取材した。

山田が担当した授業は「子供の個性を活かす役作りを親子で探求する」というテーマを掲げたもの。教材となったのは「バレンタインデー」「ホワイトデー」を背景とする2種の脚本だ。学校を舞台にしており、それぞれの脚本で「男子生徒・たいちがバレンタインデーのお返しを、女子生徒に渡そうとする」「女子生徒・あかねがバレンタインデーのチョコを、男子生徒に渡そうとする」と設定が異なっている。「Zoom」のウェビナー機能を通じて指導を受けることになったのは、A芸の生徒4人(男:2人、女:2人)。各生徒の親も「木村先生」という役どころで参加し、「親子での演技」を体験することになった。


【1組目】山田孝之「台本は、答えではなくてヒントだと思ってください」

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まず初めに授業を受けることになったのは、女子生徒と父親。山田からキャラクターの心情を丁寧に説明されつつ、本番1回目に臨むことになった。芝居を目の当たりにした山田は「全然普通にできるんですね……、すごいな」と驚きながらも、「男子生徒を探している感じが伝わらなかった。彼のことをきちんと思いながらやってみよう」と指摘。本番2回目を経て、山田が提案したのは「木村先生が大嫌いというパターン」というもの。やがて、台本のト書き、セリフ前後の「…」の意味合い、「間(ま)」の重要性を示していく。

「台本は、答えではなくてヒントだと思ってください。監督によっては『そのまま言って下さい』という人もいるかもしれないけど、もし僕が監督だったら、自分の言いやすいようにやってくれることがベスト」と語る山田。「こんな風に言おうか、こんな風に作ろうか――色々なパターンを楽しんでほしいんです。それがお芝居をすることの楽しさだと思う」と告げ、父親へメッセージをおくった。

山田「子役の子の芝居を見ていて『固いな』と思うことがあるんです。お芝居の経験があまりないご両親が、お子さんの練習に付き合っていることが多いので仕方ない点もあるんですが……一番ダメなパターンは『良い子の芝居』で現場に来てしまうこと。自分のお子さんが表舞台に出るので、良く見せたいじゃないですか? ただお芝居に関しては“嫌な子”という役の場合、本当に嫌な言い方をしてくれた方がいい。それが作品のためになるし、お子さんの今後にもつながるんです。お芝居という点では、一緒に徹底したキャラクター作りをしていただいた方がいいと思います」


【2組目】山田孝之「“芝居をしていること”がバレてしまうと意味がないんです」

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続いて授業を受けることになったのは、男子生徒と母親だ。「恥ずかしいでしょうけども、お互いに顔を見合ってやってみてください。僕らもいつも恥ずかしいんですよ? でも『自分は役の人物だ』と思い込むと恥ずかしさがなくなってくるんです」と語りかける山田。本番1回目の評価は「『好き』ということがバレバレだよ(笑)。もう少し気持ちを隠してほしいなぁ」というもの。「生意気な子」「先生のことが嫌い」というパターンに変更した後は「目を見て話す」ことの大切さを伝えていた。

「嫌いな人と話す」という点について「その光景を見た人に伝えなくてはいけない時、ひとつの表現の仕方として『目を見ないでぼそぼそ話す』というのがある。これで(対話に)前向きじゃないということが表現できるんです。表情、セリフを言うまでの間(ま)、こういう点を重視してチャレンジしてほしいな」と助言する。すると、生徒の母親は「オーバーリアクションと言われることがあるんです。喋ってから表情を作りなさいと指摘されることも……。声で表現するべきなんでしょうか?」と質問。山田は持論を語り始めた。

山田「お芝居はセリフも覚えますし、キャラクターを作るということなんですが、“芝居をしていること”がバレてしまうと意味がないんです。例えば生意気な子を演じた時、見た人たちが『この子は、本当に嫌な子なんだな』と思わせることができたら、俳優として勝ちです。『この人は本当にそんな人なんだ』と思わせることが重要。特に、まだ世の中に知られていない人はチャンスなんですよね。ちゃんとキャラクターを作り、振り切ってみせる。『実際に会うと、こんな子なんだ。ちゃんと芝居をしていたんだ』と印象付けられるはずですよ。難しいかもしれないけど“芝居をしない”ということを考えるといいと思います」


【3組目】山田孝之「キャラクターを作る時間を楽しむことが大切です」

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3組目も男子生徒と母親のコンビとなった。本番1回目の芝居について「もう少し感情を隠した方がいいのかなと思いました。『僕は言い辛いんです』という表現をしているように見えたからね。無理に動かなくていいですよ。それは芝居が大きく見えてしまう可能性があるんです」と話しつつ、「カメラの位置にも影響されるんですが――例えば、バストアップで撮られている時は、目の動きだけで充分伝わることがあります。『演技をしているな』と思われないことが重要かな」と具体的な例をあげてみせた。

やがて「生徒と先生がめちゃくちゃ仲が良い」という設定に変更。アドバイスを基に実践した結果は「5万倍よくなりました! 自然でした。そういう人なのかなと見えました」(山田)。続けて「生徒と先生が互いのことを嫌い」という別パターンでは、母親にも演技指導を行う。「お母さん、上手いなぁ……、安心ですよ。こんなに上手い人が、芝居の相手をしてくれている。これって凄い重要なことですから」と述べ、芝居の楽しさを伝えてみせた。

山田「こんなにも短い掛け合いなのに、色々なパターンがあるわけじゃないですか。自分ひとりでも、お母さんと一緒でもいいんですが、色々なパターンを見つけてほしい。『こういうキャラクターだったらどんな風に喋るかな』『こういう関係性にしたら、どうやって話すのか』といったことを楽しんで。僕はキャラクターを作る時間というのが、本番で芝居をする時間と同じくらい好きなんですよ。そこを楽しむのが大切だと思います」


【4組目】山田孝之「演じる役を誰よりも信じて、愛してあげてください」

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ラストは、女子生徒と母親を担当することに。1回目の本番を見た山田が「(好きというよりも)心配しているように見えちゃったな。好きっていう気持ち、チョコレートを渡せるという嬉しさ、でも先生にはバレたくない――ドキドキと嬉しさがある状態で、先生に声をかけて見て下さい」と話すと、2回目は演技の質が格段にアップ。「さっきよりだいぶ良くなりました。良いと思ったところは、先生の言葉が気になって、しっかりと目を見ていたところ。先生の言葉を受けた後の“残念な感じ”も目の動きで伝わってきました。会話のキャッチボールが上手くできている気がしました」と分析しながら説明していた。

このパートでは「先生と生徒」という設定を外し、「母と娘」というリアルの関係性を採用した場面も。エチュードとして「リモコンを探す娘」「リモコンの在り処を聞かれる母親」が展開していった。「バレンタインデー」の設定を引きずってしまった女子生徒がかなり落ち着いたトーンで話していたため、山田は「そんな暗い感じでリモコン探すの(笑)?」と楽しげだ。設定はどんどんと現実的なものに近づいていく。「最近、こういうシチュエーションはありました?」という山田の質問に、母親は「よくヘアゴムがなくなって探しています」と回答。「いいじゃないですか。学校に早く行かなくてはいけない。お母さんは色々忙しい時間だから『自分で探して』という感じにしましょう」と演出する山田。「もうちょっと急いでいる感じを出してみよう」と告げた後の芝居は「めっちゃよかった! 自然になっていったね」と満面の笑みだった。

山田「覚えなくてはいけないセリフはたくさんあるんですが、一番はその人であること。台本でいうと『チョコレートを渡したい。でも、先生に聞くのは恥ずかしい。だけど聞くしかない』という思いを経て、先生に聞く。その気持ちになっていることが重要。色々な気持ちを信じてあげる。役を作る時は、どのキャストよりも、どのスタッフよりも、演じる役を一番好きであってほしい。一番信じて、愛してあげることが重要です」


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全ての授業が終わった後、山田は「すごく楽しかったです。楽しかったし、伝えること、教えることの難しさを痛感しましたね。自分は教えたことが無いですし、あんまり教わってもないんですよね。お芝居もそうですし、小学校3年生くらいの時から先生の話も聞いてないから……(笑)。お芝居って難しく考えちゃうんだけど、役を作ることっていうのは、悩むけど楽しいことなんだっていうことを伝えたかったですね」と感想を述べつつ、授業を振り返る。

山田「パッと思いついた『ヘアゴムを探す』という設定、実際にきちんとできてしまうのが面白かったんですよね。相手が大人だったら、あのような感じにはならなかったと思います。もっと理屈で話をしてしまうというか――こうだからこうなる、こうだからこうなっていくという進め方になりそうです。(設定の変更は)相手が小さな子だったからできたことなのかもしれません」

題材となった脚本の設定に関しては「先生と生徒という組み合わせが良かったんですよ。実際に経験していることでありながらも、それを最も身近な親とやる。難しい部分もあったと思いますが、初めて会う人とやるよりは取り組みやすかったと思います」と述懐。また、子役にとって「両親の役割はとても大事だと思っています」と説いた。

山田「セリフ合わせひとつにしろ、親御さんを相手にして練習する機会が圧倒的に多いんですから。例えば、キャッチボールをするにしても、野球に全然興味がない人を相手にしていても、楽しくない。それに上手くもならないはずです」

今後の展望は「あまり遠くないタイミングに、同じメンバーで同じことをやってみたいですね。(授業を経て)どう成長しているのかを見てみたい」と告白。俳優を目指す子どもたちには「本当に大変なことも悩むこともあるけど、お芝居を楽しんでやって欲しいです。僕は楽しんでやっています。役を演じる、役を作るということって、人のことを考えるということなので、答えなんてないですし。人間関係もそうですけど、難しく考えずに、この人とフィーリングが合わないなと思っても、『この人、分からない、何を考えてるんだろう?』じゃ無くて、『この人はそんな風に思うんだ』と役にも向き合っていけたら、楽しめるんじゃないかなと思います」とメッセージをおくっていた。

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