【「ウルフウォーカー」評論】豊穣なアニメーションで人と自然の共生の理想を謳い上げる
2020年10月25日 21:00

なんと豊かな映像だろう。キャラクターからはみ出すほどに自由な輪郭線が感情に応じて変化し、森と街の対比的で詩情豊かな色彩、ダイナミックな構図と3Dを駆使した躍動感あるカメラワークと美しい手描きアニメーションの数々にすっかり魅了されてしまった。
これまで製作した長編映画全てがアカデミー賞にノミネートされている、躍進著しいアイルランドのアニメーションスタジオ、カートゥーン・サルーンは、本作でさらに一段階上に到達した。野生のオオカミが残る中世アイルランドを舞台に、父に憧れハンターを目指す少女と、オオカミと共に生き、自らもオオカミに変身する能力を持った少女が、都市と自然の分断を乗り越え友情を育んでいく。ケルト神話から着想を得た作品で、キリスト教的人間中心主義とは異なる、かつて存在した思想の豊穣さに目を向け、人とオオカミが共に暮らせる、あり得たかもしれない世界に想いを馳せる稀有な作品だ。
主人公の少女は二重に抑圧された存在だ。狩人は男がなるもので、子どもは街の外に出ることを禁じられている。そんな抑圧的な街はモノトーン調に描かれ、対照的に森は自由を象徴するかのように豊かな色彩が広がる。対比的構図はキャラクターデザインにも表れている。町の人物たちは鋭く鋭角で、ウルフウォーカーのメーヴやその母は、丸みを帯びた包容力を感じさせるデザインになっている。この対比には、既存の人間社会の硬直さが表れている。
そして、縦横無尽のアニメーションはひとときも観客を飽きさせない。人物の感情に合わせて自由に形状を変化させる輪郭線、ヒトからオオカミへと変身してゆくメタモルフォーゼは、クラシカルなアニメーションの魅力をたっぷり持ち合わせ、3Dを駆使したダイナミックで奥行きあるカメラワークがそれに加わり、懐かしさと新鮮さを併せ持ったマジカルな映像を生み出している。
自由を求める少女たちを、自由なスタイルのアニメーションで活写し、アニメーションの豊穣さを示した傑作だ。
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