大島優子が魂の叫び 石井裕也監督「人間がタッチしてはいけない領域に到達していた」
2020年9月12日 20:00

[映画.com ニュース]若手映画監督の登竜門である第42回ぴあフィルムフェスティバル(PFF)が9月12日に開幕、オープニング作品である石井裕也監督の「生きちゃった」が上映され、石井監督、出演した仲野太賀、若葉竜也、大島優子によるトークが行われた。
新作「生きちゃった」は、アジアの俊英が集う国際プロジェクト「B2B(Back to Basics)A Love Supreme(原点回帰、至上の愛)」の1作。ある出来事をきっかけに、予期せぬ未来へと突き進む男女3人を描く。
幼なじみだった男女3人が大人になり、それぞれの不器用な生きざまを抉るように描き出した石井監督は「あらゆる虚飾みたいなものをひっぺ返して何が残るのか。本質を描くような試みをやってみたかった」「この映画のすごみは俳優の体の迫力と熱気と魂。それがこの作品のポイント」と見どころとともに、「この映画をやろうと決めてからクランクインまで2カ月しかなかった。偶然スケジュールが空いていて、この無謀な試みに賛同してくださった、奇跡的なキャスティング」と俳優陣を紹介した。
この日、俳優陣に石井監督が質問するという流れでトークが進み、石井監督は、大島が劇中のとある場所で絶叫するシーンについて「大島さんは壮絶な叫びをした。それは何だったのか?」と問いかけた。
大島は「台本で(叫ぶ)とト書きにあったけれど、持っていく感情がどうなるのかわからないので、撮影前は叫ばないかもしれないと思ったんです。でも、いざ、そのシーンに入った瞬間に、高揚する気持ちと、(役柄の)奈津美として芽生えた恐怖を感じた。奈津美として生きて、腹の底の叫びが自然と出てしまって、言葉にならない叫びになった」と振り返り、「でも、嫌なことがあったときは、私は一人で家で叫んでいます(笑)」とも。
同シーンについて仲野は「奈津美の人生が全て見て取れるような叫び。大島さんが家であんな叫びをしていたら心配です……。人の人生を見た瞬間だった」「あのシーンは見てはいけないもの。人に見せてはいけないものを大島さんはやってらした」と述べ、石井監督は「人間がタッチしてはいけない領域のような、神というか人知を超えたものを感じた。大島さんはそういうものに到達していた」と感心しきり。
ふたりの感想に対して大島は、「役者は人に見せちゃいけないものはないと思っています。見せ方というものはあるけれど。奈津美という役を通して信頼関係が生まれたから、爆発したものを出せた」と俳優哲学を語った。
自身の「代表作になる」という確信を持って本作に臨んだという仲野は「自分の人生において、10代の時に出会った石井監督の存在ってすごく大きくて。男性としても、俳優としていろんな気づきを与えてくれた。自分自身が石井裕也にほれ込んで、プライベートでもいろんな話をして。役者として、芸名を変えたりするタイミングで、石井組へ参加の機会が回ってきて、大きな人生の転換点になると思った。脚本を書いた人の温度が伝わってくるセリフの数々から、石井監督が忖度無しに情熱を注いでいるということが読んですぐわかった。今まで僕が映画に対して抱いていたあこがれや期待がそこに宿っているような気がした」と石井組への参加への思いを熱弁した。
プライベートでも交流のある仲野と若葉。ふたりの感情が一気に高まるラストシーンについて「僕と太賀は14年前に出会ってて、そこの関係性に嘘はない。ラストシーンを撮るときに、最初は自分が今までやってきたことを試されると思っていたけど、(演じるにあたり)何にも考えてなかったかも。太賀を見てそれだけ。作為的なものはなかった。試写で見て、新しい領域に行けたような感じがした」と述懐。
仲野が演じる厚久は、感情をうまく言葉で表現できないという設定だ。「愛情の表現を日本人は上手にできないけれど、本当の気持ちや愛を胸の奥に潜ませるという素晴らしさもある。狭い日本の愛の話を描くと同時に、大きい世界の日本社会そのものも忍ばせている」という石井監督の言葉を受け、「(大事なことを)うまく言葉にできない男の話をしているのに、石井さんに言葉でなげかけて、それを頭で理解するのは、本末転倒という感覚があったのでやってみるしかなった。要領のいい作り方ではない映画だし、敢えてめんどくさいことを頭と心と体で作り上げた映画。ピュアにこの映画に向き合った」(若葉)、「メジャー映画、日常を忘れるような大作も映画の力ですが、今自分たちが生きている社会の実感みたいなものを、もう一度感じさせてくれるのも映画の側面。これは壮絶な映画になっているけれど、生きることの力強さを感じてもらえると思う」(仲野)と力強く語った。
「生きちゃった」は、10月3日から東京・渋谷ユーロスペースほか全国公開。英題「All the Things We Never Said」として中国、香港、台湾、マカオなどでの上映も予定されている。
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