戦後ドイツの“不都合な真実”描く「コリーニ事件」 犯人の動機につながる重要シーン入手
2020年6月12日 15:00
[映画.com ニュース] ドイツの現役弁護士作家によるベストセラー小説を映画化した「コリーニ事件」(公開中)の本編映像の一部を、映画.comが入手した。
フェルディナント・フォン・シーラッハによる原作は、40カ国以上で翻訳され、ドイツ国内の累計発行部数は50万部を突破。作中で語られた“法律の落とし穴”がきっかけとなり、出版後の12年にはドイツ連邦法務省が省内に調査委員会を立ち上げるなど、まさに小説が国家を揺るがす事態となった。
経済界の大物実業家を殺害したイタリア人労働者のコリーニ(フランコ・ネロ)。被害者とのつながりはなく、動機も不明だった。このままでは死刑廃止国であるドイツでは最高刑にあたる、終身刑を科されることになるコリーニを助けようと、新米弁護士のライネン(エリアス・ムバレク)が奮闘する。
公開された映像は、コリーニの過去に遡った1940年代、第二次世界大戦中のイタリアのシーン。町の広場には悠々とするドイツ兵と、それに反し銃で統制されるイタリア人たちの姿があった。指揮官と見られるドイツ兵は、イタリアの民衆に向かい「悪党をかくまうな」と命令する。子どもを捕らえた兵士の姿を見て声を荒げた指揮官は、子どもに名前を聞く。子どもが「ファブリツィオ・コリーニ」と名乗ると、場面は現代の法廷へ。コリーニは事件について釈明する決意をし、殺人を起こす動機となった壮絶な過去が明らかになる。
映像に登場するドイツ兵たちや、劇中で語られる驚愕の事実について、原作者のシーラッハは、実際の歴史的事実や、自身の祖父を意識しながら小説を書いたと語っている。その祖父というのは、ドイツの教科書にも載る歴史上の人物であり、ナチスの青少年団体ヒトラーユーゲントの有力な指導者だったバルドゥール・フォン・シーラッハだった。
当時のドイツでは、人気作家として名声を得ていたシーラッハが祖父の過去を公表したことが話題に。家族の過ちについて臆することなく描き切ったシーラッハの信念も伝わる作品となっている。
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