私らしく生きるために、僕は性を捨てた――「ぼくが性別『ゼロ』に戻るとき」5月公開
2020年3月9日 12:00
[映画.com ニュース] NHKで放送され、ギャラクシー賞候補になったドキュメンタリーの“全長版”となる映画「ぼくが性別『ゼロ』に戻るとき 空と木の実の9年間」が、5月22日から公開されることが決定。あわせて、メインビジュアルと場面写真もお披露目された。
カメラが向けられているのは、女性として生まれたが、自分の性に違和感を持ち続けていた小林空雅さん。13歳の時、心は男性、生物学的には女性である「性同一性障害」と診断される。17歳の時に出場した弁論大会では、700人もの観客を前に「男性として生きていく」ことを宣言。20歳になると、性別適合手術を受け、戸籍も男性に変えた。
本作は、そんなひとりの若者の9年間の変化と成長を描いた“こころの居場所”についてのドキュメンタリーだ。昨年11月、短縮版として再編集した「僕が性別“ゼロ”になった理由」はNHKで放送され、大きな反響を呼んだ。公開に先立って行われている自主上映会では、全国50回以上、3000人を超える動員を記録している。
空雅さんは、78歳で性別適合手術を行い女性となった八代みゆきさん(95歳)、男と女に二分される性に違和を感じ、自ら「Xジェンダー(性別なし)」であることを明かして性の多様性を伝える中島潤さん(26歳)らと出会っていくなかで、改めて自身の性を見つめなおす。劇中のラストで下した判断は、驚くべきものだ。
監督を務めたのは、元NHKディレクターの常井美幸。2010年、新聞記事で「心と体の性別が一致しない性同一性障害の子供たちは、男女別の生活を求められる学校で、さまざまな悩みや苦しみを抱えている」ことを知った。当時は、LGBTという言葉も普及していなかったころ。そんな子どもたちを取材したいと考えていた時、偶然知り合ったのが小林さんだった。常井監督は「『どうしたら自分らしさを失わずに、この社会で生きていけるのだろう?』。私は常に自分自身に違和感をもちながら、自分の居場所を探してきました。人格の根幹である『性』が揺れている人たちを描くことで、その答えを見つけようとしたのかもしれません」と振り返り、劇場公開への思いを述べている。
常井監督「登場人物たちはそれぞれ『自分とは何者か』『自分らしい生き方』を真剣に模索する人たち。『性別』という枠を超えた向こう側には、本当の自分がいることを見つけた人たち。彼らと出会うことで、私は自分の生き方を問い直し、新たな気づきをもらい、自分が目指す社会へのイメージを膨らませるきっかけをもらいました。このドキュメンタリーは『性別』をモチーフにしていますが、『性別』のことだけを描きたかったわけではありません。男と女だけではない、いろいろな形の性別があることを描くことで、カテゴリーの枠をはずれて自分らしく生きられる社会、ひとりひとりが互いの違いを超えて受け入れあえる社会。そういう自由な社会に少しでも近づけたらと思って制作しました。このたび劇場で公開されるにあたって、ひとりひとりが自分らしい生き方を問い直すきっかけになったらうれしいです」
「ぼくが性別『ゼロ』に戻るとき 空と木の実の9年間」は、5月22日からアップリンク渋谷ほか全国順次公開。
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