【FROM HOLLYWOOD CAFE】「Fleabag」で開花!次世代を背負うフィービー・ウォーラー=ブリッジに注目
2019年10月12日 09:00

[映画.com ニュース] いまハリウッドでもっとも注目されているクリエイターと言えば、間違いなくフィービー・ウォーラー=ブリッジだろう。彼女が企画・制作総指揮・脚本・主演を務めた英ドラマ「Fleabag フリーバッグ」は、米テレビ界最高の栄誉とされるプライムタイム・エミー賞(第71回)において計6部門を受賞。その数日後には、同番組の世界配信を行うアマゾン・スタジオと大型契約を締結し、彼女はAmazonプライム向けのオリジナルコンテンツを手がけていくことになるという。(文/小西未来)
ウォーラー=ブリッジが企画・制作総指揮を務める「キリング・イブ Killing Eve」はシーズン3への継続が決定しているし、「007」シリーズ最新作「ノー・タイム・トゥ・ダイ(原題)」の脚本にも参加。さらには米有料チャンネルHBOの新ドラマ「Run(原題)」の制作総指揮や、自身初の監督映画の準備も進めているという。ウディ・アレンやリッキー・ジャーベイス、ラリー・デビッドなど、優れたコンテンツを生み出しつつ、自らも出演をこなすクリエイターは決して珍しくないが、女性ではおそらく初めて。ミレニアル世代女性の価値観に基づいているからこそ、彼女の作品は同世代の共感を呼ぶし、他の世代にとって新鮮に映るのだ。

「Fleabag フリーバッグ」成功の最大の要因は、主人公のキャラクター設定だろう。性欲が強く、タブー知らずで、無軌道な独身女性は、「ブリジット・ジョーンズの日記」のブリジット・ジョーンズや、「セックス・アンド・ザ・シティ」のキャリー・ブラッドショーを進化させたような設定だ。
先日、ハリウッド外国人記者協会の記者会見で、ウォーラー=ブリッジはフリーバッグ誕生の経緯を明かしてくれた。
「女性の性生活を正直に打ち明けるのはとても危険な感じがして、身震いがしたの。彼女はセックスに正直であることを、他人に対する一種の鎧として使っている。セックスを完全にコントロールしていて、いつでも好きなときに得ることができる。そこに何ら深い意味はない。そうすることで、彼女はある種のパワーを得ることができる。同年代の友だちも、私自身も20代のときはそうだった。そうした姿勢をスクリーンに投影し、彼女が被っている仮面と、その奧にある複雑さを見せたらどうなるだろうって考えたの」

彼女の言うとおり、「Fleabag フリーバッグ」は欠点だらけのヒロインが引き起こす騒動をコミカルに描いていくのだが、虚勢の背後に深い悲しみと喪失感があるからこそ、視聴者の共感を呼ぶ。
「私自身、20代はとてもシニカルで、いつも何かにイライラしていた。なぜか分からないけど、いつも混乱していて、崖っぷちに立たされている気分だった。おまけにいろいろ不幸が起きて、皮肉屋になっていた。それで、自分のなかにある恐怖を増長して、このキャラクターに投影すれば、自己探求ができるんじゃないかと思ったの。実際、この役によって私は救われたと思う。彼女を書き、演じることによってね」
舞台劇として披露された「フリーバッグ」は、その後、テレビドラマ化。笑いとシリアスさを絶妙なバランスで織り交ぜた極上のシナリオと、イギリスを代表する名優たちによる競演のみならず、ウォーラー=ブリッジはさまざまなイノベーションを持ち込んだ。たとえば、登場人物がカメラ目線で視聴者に語りかける「第4の壁を破る」手法だ。これは「ハウス・オブ・カード」などでお馴染みだが、コメディとの親和性がすこぶる高いうえに、シーズン2では一歩踏み込んだ利用法を披露している。

「Fleabag フリーバッグ」シーズン2を見終えた僕は、フィービー・ウォーラー=ブリッジというクリエイターに畏怖の念を覚えるようになった。こんな感覚を抱いたのは90年代以来だ。当時はインディペンデント映画の興隆とともに、スティーブン・ソダーバーグ、クエンティン・タランティーノ、クリストファー・マッカリー、ポール・トーマス・アンダーソン、クリストファー・ノーランといった優れたクリエイターが雨後の筍のように出てきていた。
いまではインディペンデント映画界はほぼ消滅してしまったが、優れたクリエイターたちはテレビドラマの世界に活路を見いだしている。そんななかで、次世代を背負う新たな才能がテレビドラマのなかから誕生するのは必然かもしれない。ウォーラー=ブリッジがこれからどんな傑作を生み出していくのか、見守っていきたいと思う。
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