B・メンドーサ監督、フィリピン麻薬戦争を描いた作品で追求したリアリティを語る Netflix問題にも言及
2019年7月5日 21:00

[映画.com ニュース]フィリピンの巨匠ブリランテ・メンドーサの「アルファ、殺しの権利」が7月5日、東京・有楽町スバル座で開催中の特集「東南アジア映画の巨匠たち」で上映され、メンドーサ監督がトークショーに出席した。
第62回カンヌ国際映画祭の監督賞に輝いた「キナタイ マニラ・アンダーグラウンド」や「ローサは密告された」で知られるメンドーサ監督がメガホンをとった、フィリピン麻薬戦争を1人の警察官の視点から生々しく切り取る問題作。警察署が麻薬組織にスパイを送りこみ、善と悪、表と裏が入り乱れる戦いが展開していく。
実際の警察署で撮影し、そこで働く警察官が出演したという本作。メンドーサ監督は「ストーリーに忠実でありたい、真実を反映したい。それがリアルである、ということだと思います。状況、キャラクターがリアルであれば、スクリーンに投影されて信憑性が生まれ、正直な描写ができると思います」と意図を明かす。リアリティを追求すべく撮影環境にこだわりを持っているからこそ、撮影許可など困難もあったそうだが、「例えばギャラリーがいて撮影が難しいなら、逆にエキストラとして出演してもらいました。障害と考えるのではなく、サポートをお願いして役立ってもらったのです」と振り返る。
劇中で犯罪に手を染めた者たちが命を落としていく展開については、「何らかの違法なことに関わった時点で、身は常に危険にさらされていて、何が起こってもおかしくないという立場になります。遅かれ早かれ、何らかの報いを受ける可能性がある。誰かに邪魔だと思われたり、知り過ぎてしまったりすると、処罰される運命にあるということを描きたかった」と解説を加える。さらに、終盤で遺族たちのどこか晴れやかな表情をとらえている場面に質問が及ぶと、「人生は何があっても続くサイクルです。不確実で、確かなものは何もない。そして私は、映画の最後で『はい終わり』とピリオドを打つようなことはしたくない。映画の方程式的な、フォーマット化された終わり方はしたくないわけです。家族が喪に服している姿も終わり方の1つですが、答えを示すのではなく、人生のリアリティを見せたかったんです」と明かした。
オンラインストリーミングサービスNetflixで、本作と同じ麻薬戦争をテーマにしたシリーズ「Amo」を手掛けたメンドーサ監督。「『Amo』のリサーチ段階で膨大な情報を集めて、Netflixのシリーズではカバーしきれなかったので、その情報を活用したいと思い映画を作りました」と語る。さらに、カンヌ国際映画祭のNetflix作品の締め出し問題に触れ、「テクノロジーや選択肢が多岐に渡っているので、鑑賞者1人1人が判断すれば良いと思います。人々が映画から影響を受けるか否かは、スクリーンの大小ではなく、結局はストーリーの問題です。スクリーンの大小は様式の問題に過ぎません。映画を作るものの立場から言えば、映画であろうと、テレビシリーズであろうと、常に同じ量のエネルギー、献身と情熱で作っています」と持論を展開した。
「東南アジア映画の巨匠たち」は、7月10日まで東京・有楽町スバル座で開催。
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