【世界の映画館めぐり】エジプト、カイロの老舗劇場とシネコンを体験
2018年12月27日 16:00
ピラミッドにスフィンクスなど世界で最も有名な古代文明発祥の地のひとつとして知られる神秘の国、エジプト。しかし、日本からはるか遠いアフリカ大陸に位置し、気軽に訪れるのはなかなか難しい国でもあります。ピラミッドのほかには何があるのか? そして、どんな映画が見られているのか……映画.comスタッフが、エジプトの首都カイロの2つの映画館を訪問しました。
まずはじめに訪れたのはカイロの庶民的な下町の繁華街にある「カイロパレスシネマ」。あたりには飲食店が並び、朝から晩まで人通りの絶えないにぎやかな場所に位置します。世界の劇場情報のポータルサイト(http://cinematreasures.org)よると、1945年に開館したそうで、年季の入った趣のある外観です。この日上映されていたのは看板が出ていた1作のみ。アラビア語ができる知人に頼んで読んでもらったところ「ハルブ クルムーズ」というタイトルで、昔の戦争をテーマにした作品です。
上映時間も読めず、チケット販売もどこかわからなかったため、飛び込みで館内に入ってみたら、館内の男性がスクリーンまで案内してくれました。200席は優にありそうな広いスクリーン。平日の日中だったこともあり、館内の客入りはまばらでしたが、スクリーン横には立派なビロードのカーテンが纏められ、老舗劇場の風格が漂っています。請求されたチケット代(日本円で500円ほど)をその場で係員に支払いました。
筆者にとって初めてのエジプト映画。アラビア語の作品なので、セリフはなにひとつわかりませんでしたが、戦争娯楽大作といった趣の作品で、広大なセットで撮影され、大雨が降ったり、CGを使った臨場感溢れる戦闘シーンがあったりと、ハリウッド映画に勝るとも劣らないスペクタクル感満載。宗教上、女性の描き方が保守的なお国柄だからか、戦争映画という物語の特性上からか、女優はベリーダンスを踊る女性と、主人公の家族の少女くらいしか見られなかったのが少し残念でしたが、男たちの固い友情と絆が感じられる熱い作品でした。
翌日は同じく下町エリア、前述の「カイロパレス」からも程近い「ルネッサンス」という中規模のシネコンへ。上映時間が数字で書かれていたので、チケット売り場へいき、ポスターの写真を頼りにコメディタッチの作品を選択。5作品のうち4作品がアラブ圏の映画で、唯一の外国語作品としてドウェイン・ジョンソン主演のハリウッド映画「スカイスクレイパー」が日本より早く公開中でした。
ここでは、50席程度の小さめのスクリーンで鑑賞。こちらもアラビア語のセリフのみ。母親と同居の中年男性が主人公、ウッディ・アレンを彷彿とさせるコメディ映画だということがわかりました。主人公はテレビ局の番組制作の仕事についており、室内やロケーションの雰囲気はどこか西洋的で、ベールをかぶらないショートヘアのキャリアウーマンが出てきたり、中国人と思われるアジア系のビジネスマンとの商談シーンがあったりと、最近の世相も反映されているような物語。途中で画角のサイズが変わったりと、実験的な試みも。アラブ的な物語を予想していたので、良い意味で期待を裏切られた作品でした。鑑賞後に知人に訳してもらったところ「カルブのお母さん」というタイトルだそう。口うるさそうなお母さんが何度も出てきたので、そこを笑いにしていたのかもしれません。
館内施設は日本のシネコンとほぼ同じで、3D専用スクリーンも。劇場の人によると、エジプト国内で展開するシネコンチェーンのようで、エジプトだけではなくレバノンなど、他のアラブ圏の作品もラインナップされているとのこと。私の語学力のなさも原因で、ほとんど英語が通じなかったのですが、英語で書かれた公式HPがあると教えてくれ、Facebookやtwitterなど、SNSでの発信もしているそう。エジプトでどんな映画が上映されているか興味がある方は、覗いてみてください。(https://www.rnscinemas.net/)
エジプトが世界に誇るスポットといえば、もちろんピラミッドですが、筆者が映画ファンにオススメしたいのは「白砂漠」と呼ばれる、奇岩が並んだ砂漠。太古に海に沈んでいたという真っ白な石灰岩が彫刻の様に点在しており、まるで別の惑星に来たような絶景が目の前に広がります。その近くには「黒砂漠」と呼ばれる、火山の黒い溶岩が散らばる砂漠もあり、二つあわせて「スター・ウォーズ」のようなSF映画のロケ地にはうってつけだと思いました。どちらも旅行代理店を通じて訪問できるので、エジプトに行く機会がある方は、ぜひ足を伸ばしてみてください。
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