「ウォーキング・デッド」アンドリュー・リンカーン、9年間の旅の終着地点で思うこと

2018年10月7日 12:00


主人公リック役を演じてきた アンドリュー・リンカーン
主人公リック役を演じてきた アンドリュー・リンカーン

[映画.com ニュース] 大ヒットサバイバルドラマ「ウォーキング・デッド」で、ゾンビがはびこる終末世界で仲間たちを率いてきたリック・グライムス役のアンドリュー・リンカーンが、今秋放送のシーズン9をもって番組を卒業する。今年7月に米サンディエゴで開催された「コミコン・インターナショナル・サンディエゴ」で卒業を発表した翌日、ハリウッド外国人記者クラブ(HFPA)のインタビューで心境を語った。(取材・小西未来/文・編集部)

※この先、シーズン8までの内容に言及している箇所があります。

リックが束ねた3つのコミュニティである「アレクサンドリア」「ヒルトップ」「王国」の連合軍と、ニーガン率いる「救世主」の全面戦争の最中、リックの愛息カールが命を落とす。カールの遺志を尊重しニーガンを生かすリックだったが、その決断に仲間たちは不満を抱く。そんななか、アレクサンドリアの人々は、未来に目を向けて歩き出し、新たな生活を始める。

――シリーズ卒業が決まってから劇的な変化はありましたか?

「いまも変化の最中だね。(コミコンの)パネルセッションの後は胸が熱くなったよ。作品を撮り終えたときは、やりとげてホッとしたからか悲嘆に暮れるようなことはなかった。いまも信じられないほど素晴らしい旅の途中なんだ。ぼくたち全員にとって『ウォーキング・デッド』は仕事以上の存在で、この10年間の大半はこの作品で汗まみれになって、息を切らして、血を流してきたんだから、本当に大きな変化になるよ」

――今シーズンでは、社会に必要なルールや社会が向かう先がテーマになっていますね。

「シーズン9では、ぼくらが常に思い描いてきた理想が現実になるんだ。リックは長く続くゲームに参加しているんだと思う。リックはそれをわかっているし、ほかの共同体と取引したり、良い関係を築いたりしないと、深刻な事態になることも理解している。リックは相当な現実主義者なんだよね。ミショーンはグループにおける思想家であり、道徳的な指針であり、彼女自身そうであろうとしているように思う。シーズン9では、リックとミショーンの美しいラブストーリーや、ふたりのリーダーが新しい世界の陰と陽として協力し合う姿も見られる」

「だけど、困難も付きまとう。ニーガンはもういないと思っている人たちの、社会や未来、正義に対する考え方は、リックたちとはまったく違う。だから、物語の哲学的で興味深い部分にぼくたちは進んでいけるんだ。奥深く繊細なその部分は、お互いを心から大切に思っている5人の主要な登場人物たちにも関わってくる。家族と戦わないといけないとしたら、それは敵と戦うより傷つくことだよね」

――いま番組を降板するという決断が、本作の今後にどう影響すると思いますか?

「この物語はひとりの登場人物では語り尽くせないほど大きいんだ。最初からそうだった。最初はインディーズっぽさがあったけど、今では多国籍企業みたいだ。この作品の母艦となるものを絶対に壊したくないと思っていた。それに、ある登場人物がいなくなるとほかの登場人物たちが前に押し出されてきた。シーズン9ではまさにそれが起こっていて、これまでに降板していった役者たちを含め、すべてのキャストのすばらしい演技を見られると思う。あっと驚くような場面がたくさんあるよ」

「でも、これは自分のための決断だった。長い間、子どもたちの成長を遠くから見守ってきた。でも、子どもたちがぼくを必要とするのを止めることはできないし、無視することなんて到底できない。だから、今回の決断をした」

「それと同時に、もうひとつの“家族”はみんなアトランタにいる。みんながホテルのテラスでくつろぎながら、次のエピソードについて話しているところに入っていったけど、ぼくはそのエピソードに出ていなかった(笑)。それほど、この作品の一部であることを当たり前に思っている自分がいたんだよ。世間では、降板はぼくの意思ではないと言われているけど、自分で決めたことなんだ。制作総指揮のロバート・カークマンとぼくとで決めた。みんなには、ネタバレなしでこのシーズンの結末を見届けてほしい」

――番組を卒業して寂しいと思うもの、思わないものは何ですか?

「現場に向かうときに見たジョージア州の朝日が見られなくなると思うと寂しい。(夜通しの)撮影のあとの朝日は、もういいかな(笑)。カウボーイ・ブーツやカウボーイ・ハット、銃を身につけなくなるのは寂しいけど、朝4時半のモーニングコールがなくなるのは嬉しいね。ダニやヘビもなんかも。みんなとのふざけ合いや、ノーマン・リーダスが自分のトレーラーで出してくれていた24時間オープンのコーヒーショップを懐かしく思い出すだろうな。ぼくが教えたバックギャモンでノーマンに負けて、苦労して稼いだお金を失わなくてすむのは最高だね。ノーマンほどツイてる人には会ったことがないよ。この作品を一緒に作り上げたスタッフや役者、生きている役でも、ゾンビの役でもみんなに会いたくなると思う。この途方もない旅を作り上げた日々が恋しくなるに決まっている。『ウォーキング・デッド』という作品に関われたことは貴重な経験だよ」

リックがゾンビとしてこの世に戻ってくるかはわからないが、リンカーンが本作に戻ってくることはほぼ確実。シーズン10に監督としてカムバックする計画を進めているのだ。だがいまは、リンカーンがリックとして生きた9年間の旅の終着地点に思いを馳せたい。

「ウォーキング・デッド」シーズン9は、FOXチャンネルで10月8日から放送開始。

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