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ブータン人監督によるドキュメンタリーが世界初公開 「移りゆく時代を撮りたかった」

2018年8月17日 14:00

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ブータン出身のアルム・パッタライ(右)と ハンガリー出身のドロッチャ・ズルボー
ブータン出身のアルム・パッタライ(右)と ハンガリー出身のドロッチャ・ズルボー

[映画.com ニュース] “世界一幸福な国”と称されるブータンに生きる親子2世代の価値観を映したドキュメンタリー「ゲンボとタシの夢見るブータン」が8月16日公開する。共同で監督を務めたブータン出身のアルム・パッタライと、ハンガリー出身のドロッチャ・ズルボーが来日し、作品を語った。

16歳の兄ゲンボは、家族が代々受け継いできた寺院を継ぐために学校を辞め、戒律の厳しい僧院学校へ行くことについて思い悩む。15歳の妹タシは、自らを男の子だと考えサッカー代表チームに入ることを夢見る。一方、父は、ゲンボには出家して仏教の教えを守ることの大切さを説き、タシには女の子らしく生きる努力をするよう諭す。そして母親は、英語教育を受けさせ、海外の観光客に英語でお寺の説明をすることの方が大切だと主張する……。急速な近代化の波が押し寄せるブータンの寺院の一家を捉えた。

若手ドキュメンタリー制作者育成プログラム(ドック・ノマッド)で出会ったふたり。、国をまたがる6つの財団から資金を獲得して完成させた。パッタライは、インドの大学院でメディア論を学んだ後テレビ局に就職し、本プログラムに参加した。「世界中からバックグラウンドの違う人たちが集まって作品をつくるためには、お互いに頼りあわないといけません。そこから相互理解というものが必然的に生まれていきました。もともと僕らは、少年少女をテーマにしたドキュメンタリーをずっと作っていて、この作品も同じテーマで進めました」とズルボーと共同監督をするに至った理由を説明する。

パッタライと出会うまではアジアの国を訪れた経験もなく、ブータンについての知識も持っていなかったというズルボー。「初めてブータンを訪れ、風景そのもの、完璧な自然の静けさに感激しました。また、ブータンに生きている人たちのスピード感、価値観、そういったものも興味深いです。ヨーロッパは、何でもあって便利ですが、ブータンは物質が少なくて、不便。でも自分で自分の生活をきちんとまかなえている。そういった彼らを見ていると、命の起源を感じて、時にスピリチュアルな経験でもありました。最初は、表面上だけでしたが、撮影を通じてもっと深い部分を感じることができました。そこには仏教があり、時空の旅を感じました」

画像2(C)ECLIPSEFILM / SOUND PICTURES / KRO-NCRV

パッタライは、ブータン初の映像作家として、閉ざされた秘境というステレオタイプではない、自国のありのままの姿を映したかったと語る。「シャングリラ(理想郷)はないということを伝えたいのです。私は、ブータンの移りゆく時代を撮りたかったのです。今のブータンは近代化と伝統の狭間に立たされていて、その中に世代間の違う価値観があり、それこそ、撮るべきものだと思ったのです。移りゆく時代は、どんな国も経験していて、国によっては100年以上前にも経験したこと。グローバルな観客にはタイムリーなテーマになると思いました。世代間ギャップは近代国家だけではなく、発展途上にもあるブータンにももちろん存在するのです」

「私は、自分自身を情報や事実を追いかけるジャーナリストだとは思っていません。物語を追いたいのです。ただ、フィルムメーカーとして国を代表しているという自負はありますし、ブータンの日々や暮らしを撮って、世の中にあるブータンのイメージとは違うものを見せていきたいと思っています」

初の長編作を完成させたことは、ふたりにとって何ものにも代え難い経験になったとズルボーは振り返る。「短編の経験はありましたが、今回、長尺を作る時間の感覚、業界の様式を理解することができました。国際共同製作とは本当に難しいことです。しかも、ブータンというビザや、撮影環境、インフラの条件が整っていない国での共同製作として、価値観の違う人からお金を集めなくてはなりませんでした。ドキュメンタリーは、人と長い間の関係を持つことにもなります。特に今回のプロジェクトは、ゲンボとタシの家族と非常に親密になれて、彼らの人生の一部をもらえたことが大きなギフトでした。多文化の中で自分がどう映画を撮るかということ、自分と違う文化をどう受け入れるかということを学びました」

今作は、ブータン国内で1館だけ存在する映画館での上映が決まった。「あとは、旅するように、キャラバン上映を考えています。終わったらティーチンをやって、映画が捉えたブータン全土が抱えている問題についてディスカッションしたい。観客それぞれが自分を投影するのではないでしょうか」とパッタライ。

さらに、「ブータンの映画産業ができたのが2000年前後。上映できるのはティンプーにある1館です。普段はボリウッドを意識したような、国内映画が作られて上映されています。ドキュメンタリーは年に2~3本作られれば良いほうで、僕が作るようなインディペンデントなドキュメンタリーはまだ存在しないので、海外の映画祭には出品されず、国内のみにとどまります。昔は、ボリウッド映画を上映していたこともありますが、国が自国のゾンカ語の映画を推奨するようになっているので、今は海外映画の上映はありません」とブータンの映画事情を語ってくれた。

ゲンボとタシの夢見るブータン」は8月18日から、ポレポレ東中野ほか全国で公開。

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