「恋雨」小松菜奈&大泉洋に“映画の神様”がもたらした“雨上がり”の幸運

2018年5月27日 08:00


「恋は雨上がりのように」で初共演
「恋は雨上がりのように」で初共演

[映画.com ニュース] 人気漫画が実写映画化される際、キャスティングが作品への期待値を大きく左右するのは周知の事実。女子高生が冴えないファミレス店長に片思いする「恋は雨上がりのように」(現在公開中)で初共演を果たした小松菜奈大泉洋は、原作ファンも納得するハマりすぎの組み合わせだった。力強いまなざしで、まっすぐに役と向き合った小松と、巧みな話術ですぐに場を和ませてしまう大泉。そんな2人が“映画の神様”を呼び寄せ、まさに雨上がりのように清涼感あふれる青春映画が完成した。

本作は、眉月じゅん氏の同名人気漫画を、「帝一の國」「世界から猫が消えたなら」の永井聡監督のメガホンで実写映画化。小松演じる橘あきらは、ケガで陸上の夢を断たれた女子高生。無愛想な彼女がファミレスでバイトをしている理由は、大泉演じる店長の近藤正己だ。まっすぐに恋心を伝えてくるあきらに戸惑う近藤。ちぐはぐな片思いを通し、2人はそれぞれの夢に再び向き合っていく。

原作のイメージ通りの完璧なキャスティングが実現したが、当の小松は「あきらの気持ちがちょっとわからないなとか、どうして店長のこと好きになったのかなとか、役を通して探していった感じでした」と、最初からすんなりと役をつかめたわけではなかった。脚本の流れに沿って撮影を進めていく「順撮り」ではなかったことが、あきらの心情に寄り添うことをより難しくさせた。「原作の名シーンで、自分では言いにくかったり、腑に落ちなかったりするセリフがあって。これはどういう風に言ったらいいのかな、ブリブリした感じで見えても嫌ですし、でもあきらっぽさはすごく大事ですし、あきらだったらこういう場合どうするのかなと、すごく悩みました」という。

とりわけ時間を要したというのが、風邪を引いた近藤を見舞いにアパートを訪れ、思いの丈をぶつける場面。前日から永井聡監督に相談し、1度撮影してみてからそのセリフの必要性を判断することになった。「監督は『菜奈ちゃんが思っているより違和感はないよ』と言ってくれました。でも、自分の中では納得できてなくて。あきらの気持ちになってちゃんとお芝居したいと思っていたのに、その気持ちに持っていくことが難しかったので、他の人だったらどうやるのかなとか、いろいろ考えてしまって……。自分のことを待ってもらっている時間が苦しくて、余計にあせり始めてしまって……」。その時の苦しさがまざまざとよみがえってきたのか、時折上を見上げながら言葉を続ける。

小松「行き詰っているときに、大泉さんが『休憩をいれよう』と言ってくださって、少しフーっと解放されました。あきらの今までの心情や、あきらはこういう風に思ってここに来て、というのを一緒にたどってくれて。それにすごく救われて、リラックスしてがんばろうと思えました」

大泉「ものすごく難しいシーンを撮っているのはみんなわかっているから、誰ひとり『早くやってよ』なんて思ってない。けれども、本人は『待たせているな』ってつらい思いをしているだろうなっていうのもみんなわかる。みんなが思いあっている場だったからこそ、『気にしないでちょうだいね』ってことだったんですよね。彼女はプロだから自分で乗り切るんだろうけれども、相手役の僕がずっと黙っているのも気が重いだろうなと思って(笑)、どんなシーンだろうねっていうのを一緒に考えて話した感じですかね」

純粋で真正面からぶつかっていくあきらと、思慮深い言葉でさりげなく勇気づける近藤。そんな劇中とリンクするかのようなエピソードだ。大泉との共演だったからこそあきらになれたという小松。ラストシーンでは自然と感情がこみ上げてきた。「リハーサルも涙がとまらないというか、1回1回がすごく新鮮に感じられました。あきらの初恋が店長だったことがすごく良かったなと思えた瞬間でもありました。あの時は、あきらが店長のことすごく好きで、愛おしいと思える気持ちがすごくわかるなって思えました」。

小松があきらとして生きた証であり、見る者の心に共鳴するこのラストシーン、実はクランクインの数日後に撮影予定だったとか。「『もうラスト撮るの!?』って思った覚えがある。だけど、雨で飛んだんだよな。そうじゃなかったら全然違ったね」という大泉に、小松も「絶対に違いましたね」と大きくうなずく。「映画の神様が、『さすがにこのスケジュールは厳しいわ。これ菜奈ちゃん厳しいよ』って(笑)」。大泉はそう冗談めかしたが、運命が2人に味方したように思えてならない。ハマり役の小松と大泉に、映画の神様が “雨上がり”の幸運をもたらし、澄みきった空のようにさわやかで心が晴れわたる映画が誕生したのだと――。

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