「15時17分、パリ行き」の“本人”たち、自分自身を演じてほしかった俳優とは?
2018年2月27日 08:00

[映画.com ニュース] 2015年に起こったタリス銃乱射事件を題材にしたクリント・イーストウッド監督の最新作「15時17分、パリ行き」で、自分たち自身を演じた事件の当事者3人が、作品の舞台裏を語った。
554人の乗客が乗るアムステルダム発パリ行きの高速鉄道タリス車内で、武装したイスラム過激派の男が自動小銃を発砲。たまたま乗り合わせていた幼なじみの若者3人が、テロリストに立ち向かっていく。
事件当時学生だったアンソニー・サドラー、元米空軍上等空兵のスペンサー・ストーン、元オレゴン州州兵のアレク・スカラトスの3人は、テロリストに勇敢に立ち向かい、一夜にしてヒーローとなった。映画では3人の半生がひも解かれ、それぞれが数奇な運命に導かれて、テロと対じするさまが描かれる。なんともドラマティックな人生を歩んだ3人だが、自分たちの体験をまとめた本をイーストウッド監督が映画化するとは、さすがに予想していなかっただろう。
イーストウッドから電話を受けたというストーンは「間違いなく驚いたよ(笑)」と回想しつつ、「正直言ってものすごくホッとした」とも。「彼なら僕たちのストーリーの良さをちゃんと表現して、正しく映画にしてくれることがわかっていたから。あまりドラマティックにしすぎることなくね。始めるに当たって僕らは彼に深い信頼を持っていたし、それが何よりもエキサイティングなことだったよ」(ストーン)。
もし映画化されるとしたら、ザック・エフロン、クリス・ヘムズワース、マイケル・B・ジョーダンに出演してほしいと願っていたという3人だが、本作で自分自身を演じたことで「映画化のプロセス全体を通して、クリント(・イーストウッド)は僕らの師となり、前進する勇気を与えてくれた」(サドラー)、「僕らは少なくとも、俳優をやってみたいと思っているよ。新しい経験だったしとても楽しかった。俳優に挑戦することが僕らをどこに導くかを見てみたい」(スカラトス)と役者業へも意欲十分。
さらに、ストーンは事件に遭遇した立場から、「自分の中にある不安と向き合うことができた。僕は事件発生時に立ち戻り、自分自身を演じた。映画という形で多くの人たちが永遠に目にするであろうものを、俳優として拾い上げ選んだ。この経験から、事件の恐怖を忘れておびえることなく過ごすことを学んだよ」と本作に出演した“効能”を語る。
映画では、3人がこれまで蓄積した経験や知識が、テロリストと遭遇した際に実を結び、自衛、あるいは他者を救う助けとなっていく。ストーンは、「もし誰かが今、あまりハッピーに感じられない場所にいたとしても、少なくとも今やっていることを形にすることはできる。『大小に関わらず、今自分がやっていることはいずれ何かのためになる。無駄になんかならない』と信じることでね。何が起きるか、スキルや経験がいつ必要になるかは決してわからないんだ」と呼びかける。
一方サドラーは、「観客には、僕たちが3人の普通の男たちであると伝わるように期待している。自分たちの中に何か特別なものを持っているのは僕らだけじゃない。人々が、僕ら全員もしくは誰か1人に自分を重ねて、その中に彼ら自身を見つけてもらえるといいね。それとまた、僕らがしたことからインスピレーションを得て、自分たちの人生の障害を乗り越え、自分たちにも特別なことができると知ってもらえることを期待している」と観客にメッセージを送った。
「15時17分、パリ行き」は、3月1日から全国公開。
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