カトリーヌ・ドヌーブ主演「ルージュの手紙」 女性映画の名手の新作が公開
2017年12月9日 07:00

[映画.com ニュース] 実在の画家と作家の生涯を描いた「セラフィーヌの庭」「ヴィオレット ある作家の肖像」という女性を主人公にした作品で高い評価を受けているマルタン・プロボ監督の新作、「ルージュの手紙」が公開された。カトリーヌ・ドヌーブとカトリーヌ・フロというフランスを代表するふたりの女優が母娘を演じる、プロボ監督脚本によるオリジナルの物語。来日したプロボ監督に話を聞いた。
パリ郊外に住む助産師クレール(フロ)のもとに、30年間姿を消していた血のつながらない母・ベアトリス(ドヌーブ)から電話が入る。父親をめぐるある事件があり、今でもクレールはベアトリスを許してはいなかった。真面目すぎるクレールと人生を謳歌するベアトリス。正反対の性格を持つ2人が、互いを受け入れ新たな関係を構築していく。
プロボ監督出生時に母体に危機があり、助産師が自身の血液を輸血してプロボ監督の命を救ったという話を母親から聞かされていた。会うことのかなわなかった命の恩人に敬意を表するため、クレールの職業を助産師としたと明かす。「今作は、シナリオをすべて一人で書きました。大変でしたが自由を感じ、ある(架空の)人物像をこれだけ書けることを発見しました」と手ごたえを語る。

自然光を多用し、女性たちの生き方に光を当てるような美しい映像が特徴だ。また、物語の導入部は実際の出産場面を映すことにこだわった。「誰もがあのようにして生まれたことを見せたかったのです。ですから、出産に関してはリアルなものを撮りたかった。普通は生まれて数日のきれいな赤ちゃんしか見られないものですが、助産師という仕事を描くにあたって、リアリティを追求したのです」
大女優ふたりと、ダルデンヌ兄弟作品の常連の名優オリビエ・グルメが、味わい深いアンサンブルを奏でる。「カトリーヌ・ドヌーブは特別な存在です。彼女と仕事をするのはこちら側に柔軟性がないと難しいのですが、セリフを変えるようなことはせず、彼女が演技をしやすいような環境を作りました。ドヌーブの存在が大きいので、フロも最初は戸惑いもあったようですが、そこはベテランなので、自ら周りを取り込んでいくような役割をしていました。私はオーケストラの指揮者のような感じで、皆が演奏しやすいよう、信頼関係をもって、アドリブではなく自由に演技を出来るような現場作りに気を配りました」
さまざまな生き方を選択した女性たちを温かなまなざしで見つめるプロボ監督。次回以降も女性が主人公の作品の新作企画を進めているそうだ。「ルージュの手紙」は、シネスイッチ銀座ほかで公開中。
(C)CURIOSA FILMS – VERSUS PRODUCTION – France 3 CINEMA (C)photo Michael Crotto
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