【ソダーバーグ監督インタビュー:前編】「ローガン・ラッキー」での映画界復帰は“必然”だった
2017年11月17日 19:00
[映画.com ニュース] 「オーシャンズ11」シリーズのスティーブン・ソダーバーグ監督が、2013年の映画監督引退宣言を撤回して4年ぶりに映画界へ帰ってきた。映画.comでは、10月末に来日したソダーバーグ監督にインタビューを敢行。復帰作「ローガン・ラッキー」への思いや、本作で新たなビジネスモデルを生み出したソダーバーグ監督の声を、前後編の2回に分けてお届けする。
不運続きのジミー(チャニング・テイタム)とクライド(アダム・ドライバー)のローガン兄弟が、“爆破職人”でもある囚人ジョー(ダニエル・クレイグ)を脱獄させ、全米最大のカーレースの売上金を盗み出そうとするさまを描くクライム・エンターテインメント。上記キャストに加え、ライリー・キーオ、セス・マクファーレン、ケイティ・ホームズ、キャサリン・ウォーターストン、ヒラリー・スワンクら実力派スターが結集した。
ソダーバーグ監督が、友人であるレベッカ・ブラントが初めて手がけた本作の脚本を受け取ったとき、当然ながら自身がメガホンをとるつもりは毛頭なく、ブラントもまた、監督探しのアドバイスをもらうためにソダーバーグ監督を訪ねたと語っている。だが、脚本を読んだソダーバーグ監督はストーリーのとりこになり、ついには「この作品を他人に監督させたくない」と復帰を決断。「『監督を探してくれ』と言われた作品を自分が監督するのは、すごく恥ずかしかった(笑)」とはにかむソダーバーグ監督だったが、「でもこの脚本への思いは、そういった自分の恥ずかしさを覆すほどのものだったし、本作は作りたい作品だっただけではなく、“作らなければならない”作品だと感じたんだ。僕には、映画の世界に再び連れ戻してくれる“友人”が必要だったんだと思う」と胸にたぎる思いを吐露する。
その話しぶりからも作品愛が十二分に伝わってくるが、何がソダーバーグ監督の心をここまでつかんだのか? ソダーバーグ監督は自身の代表作「オーシャンズ」シリーズと本作を比較し、こう語る。「『ローガン・ラッキー』のキャラクターたちは、登場したときには泥棒じゃない。僕は、彼らが盗むという行為を学んでいく姿にエンタメ性を感じたんだよ。そして、強盗計画を立てること自体が、僕にとっては映画作りに非常に似ているとも思えたんだ」。
言うなれば、ジミーやクライドに自身の姿を重ね、さらには脚本の中に映画作りの面白さを再発見したということだろう。復帰にはこれ以上ない題材だったのでは?と水を向けると「本当にそう思うよ!」と力強い答えが返ってきた。「『オーシャンズ』シリーズでは、確立されたプロの集団の中に我々観客がパラシュートで落とされて物語が展開していく。だが、本作のキャラクターたちはテクノロジーもないしお金もない。そのおかげで、物語設定がより面白いものになった。何かができない、となったとき、お金を必要としない考え方を見つけていくのはとても楽しかったよ」。ソダーバーグ監督はさらに、「普通はこういうことはないんだけど、今回は出演者の1人も『このセリフは変えたい』と言わなくてね。それだけみんなが脚本に満足していたんだと思う」と明かし、満足げにほほ笑む。
ソダーバーグ監督にとって、近年携わっていたテレビシリーズと久々の映画、違いはどのような部分にあるのだろうか。「監督にとって最も大きな違いといえるのは、コンセプトをたたいている段階、つまり脚本を作っている段階だね。あとは、シーンで要求するものが異なる。具体的に言うと、映画であれば2時間で描く世界がきちんと成立していればいいが、テレビシリーズではその後何話も続いていくかもしれないから、予兆を感じさせたり前提を忍ばせたりしなければならない。世界がより大きくなっていくんだ」。
とはいえ、「僕が現場で演出をする際には、テレビも映画も大して差はないと思うな」というソダーバーグ監督。その秘けつは、監督ならではの整理された現場作りにあった。「僕の現場というのは、もちろんみんな集中力を高めてはいるけれど、リラックスした空気が流れている。僕自身は、役者から最高の演技を引き出すためにテンションは必要じゃないと考えているんだ。それはスタッフにも言えること。僕の現場は、誰かが叫んでいることもなく静かでね。通常聞こえてくるような監督とカメラマンの対話みたいなものは、(監督と撮影を兼任することが多い)僕の頭の中だけで全部行われているから(笑)」。
さらにソダーバーグ監督は、「ある一定時間以上働くと、能率が落ちてくるように思うから、長時間の拘束はしない。不必要なフッテージも撮らない」とポリシーを明かす。「役者に関しては、現場に来た瞬間に撮影に入られるように、セットや照明の準備が終わった段階にしておく。そして撮影を始めたら、撮り終わるまで何かを直すなどでキャストがセットを離れることは一切ない。よくあるような、キャストがトレーラーに戻るようなことはね。継続して撮り続けられる、ちょっと舞台をやるような感じというのは、役者にとってはすごく楽しいことだと思うよ」。
無駄を徹底的に省き、常にスタッフ・キャストが最大限の力を発揮できるように現場を整えておく。だからこそ、映画、テレビドラマ問わず、ソダーバーグ監督は高い評価を得てきたのだろう。そんなソダーバーグ監督にとって何より重要なのが、インタビュー中に何度か口にした“コントロール”。後編では、映画界をいったん離れた理由とも密接に結び付いているこの言葉の真意と、ソダーバーグ監督が本作で確立した新たな製作スタイルについてひも解いていく。
「ローガン・ラッキー」は、11月18日から全国公開。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
【推しの子】 The Final Act NEW
【忖度なし本音レビュー】原作ガチファン&原作未見が観たら…想像以上の“観るべき良作”だった――!
提供:東映
物語が超・面白い! NEW
大物マフィアが左遷され、独自に犯罪組織を設立…どうなる!? 年末年始にオススメ“大絶品”
提供:Paramount+
外道の歌 NEW
強姦、児童虐待殺人、一家洗脳殺人…地上波では絶対に流せない“狂刺激作”【鑑賞は自己責任で】
提供:DMM TV
全「ロード・オブ・ザ・リング」ファン必見の超重要作 NEW
【伝説的一作】ファン大歓喜、大興奮、大満足――あれもこれも登場し、感動すら覚える極上体験
提供:ワーナー・ブラザース映画
ライオン・キング ムファサ
【全世界史上最高ヒット“エンタメの王”】この“超実写”は何がすごい? 魂揺さぶる究極映画体験!
提供:ディズニー
ハンパない中毒性の刺激作
【人生の楽しみが一個、増えた】ほかでは絶対に味わえない“尖った映画”…期間限定で公開中
提供:ローソンエンタテインメント
【衝撃】映画を500円で観る“裏ワザ”
【知って得する】「2000円は高い」というあなただけに…“超安くなる裏ワザ”こっそり教えます
提供:KDDI
モアナと伝説の海2
【モアナが歴代No.1の人が観てきた】神曲揃いで超刺さった!!超オススメだからぜひ、ぜひ観て!!
提供:ディズニー
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。