近代彫刻の父、ロダンの半生を映画化 J・ドワイヨン「造形ではなく、人間の魂に美を見出していた」
2017年11月10日 18:00
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[映画.com ニュース]「地獄の門」「考える人」などの作品で知られる19世紀フランスの彫刻家オーギュスト・ロダンの没後100年を記念して製作された伝記映画「ロダン カミーユと永遠のアトリエ」が11月11日公開する。1880年、パリ。40歳のロダンはようやく国から作品制作を依頼されるようになり、後の代表作となる「地獄の門」に着手する。60代までの生き様を追い、近代彫刻の幕開けと言われる「バルザック像」の制作過程、弟子であり、愛人となった女性彫刻家カミーユ・クローデルとの出会いと愛憎、内妻ローズとの関係など私生活での苦悩も描く。来日したジャック・ドワイヨン監督が作品を語った。
「私は彼の作品に感動し、人間性にも興味を持ったのです。彼は、美術界のヒーローではなかった。比較的に普通の人なのに、あれほどのイマジネーションとファンタジーを持つことができた。それまでの彫刻が陥っていたアカデミズムから抜け出し、彫刻を未来へと導いていった人物です。特に興味深いのは庶民階級の出身だということ。当時のフランスでは、彫刻家にはなれません。よいところで、室内装飾に使うような彫刻、アシスタント程度の仕事しかできなかったでしょう。教育も受けておらず、美術学校の入学試験では3度も不合格になっています。それなのに、最大の彫刻家に上り詰めた。そして、若いときに、貧困、悲惨な体験もしている。その点に興味を惹かれました」
「ロダンは、アトリエであれば饒舌に、適切に芸術のことを語る人です。しかし、外に出ると、人づきあいが苦手で、芸術のこと以外には話題がなく、夕食に招かれても会話に参加せず、一晩中黙っているような人でした。同席した人は居心地が悪い思いをしたでしょう。彼にとっても、有名になってからの社交界のパーティは悪夢だったようです。しかし、リルケやオクターブ・ミルボーらは、ロダンがアトリエではいかに温かく、他人の作品について見事に話す人だったかということを書き残しています。そういった二つの顔を持っていました。また、残されたあまり文章も上手くなく、フランス語の構文がおかしなこともあるのですが、時々びっくりするほど詩的なことが書かれていることに驚かされます。社交界で内気だったロダンを描くには2時間では足りません。ですから、私はアトリエの、自分の領域にいるロダンを描こうと思いました」
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「バンサンは、『カミーユ・クローデル』でジェラール・ドパルデューが演じたような、ロダンではありません。口数が多く、言葉で何か伝えるような俳優ではいけないと思ったのです。ドパルデュー、ファブリス・ルキーニ、アンドレ・デュソリエらはみな演劇学校出身ですから。私の映画では言葉の人ではない俳優を選びました。ランドンはせりふを覚えて1時間半人の前に立つことは考えられないというタイプの俳優です。彼はロダンになりきろうとする力があり、撮影後に髭を剃るのを嫌がるほどでした」
「果たして、彼が求めていたのは美かどうか。『地獄の門』の人物たちは体がゆがんでおり、苦しんでいます。バルザック像を見ると、同じ人間が作ったとは思えないほどです。このように、長い時間をかけて彼は何かを探し、そこに到達したのでしょうが。最初、彼はアカデミズムに怒りを感じ、ミケランジェロを参照します。その後、ギリシャの彫刻に関心を持ちます。私は、はじめから彼が美的な形を求めていたとは思えません。彼は人間の内面の世界、人間の魂を彫刻にしたいと考えていたと思います。その人物像がモデルに似ているかどうかは問題ではありませんでした。写真で写せるような部分に彼は関心がなかったのです。ですから、彼の彫刻は主観的なものです。バルザックがどんな様子だったのか、何に似ているかを表現しているのではありません。彼がバルザックの小説をすべて読んだとは思えませんが、写真は使わず、作家を理解するために、バルザックの着ている服をもらったり、そういった細かいところから、アプローチしていたのでしょう。彼は、人間の造形ではなく、内側にあるもの、魂に美を見出していたのではないでしょうか」
「ロダン カミーユと永遠のアトリエ」は、11月11日から新宿ピカデリー、Bunkamura ル・シネマほかで公開。
(C)Les Films du Lendemain / Shanna Besson
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