「回転木馬は止まらない」キャストが語る“ピクニック・シネマ”の試み
2017年10月30日 13:00

[映画.com ニュース] 第30回東京国際映画祭の国際交流基金アジアセンターによる「CROSSCUT ASIA ネクスト!東南アジア」部門で、インドネシア映画「回転木馬は止まらない」が10月29日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、キャストのコルネリオ・サニー、カリナ・サリム、ライン・プロデューサーのリサ・アングラヘニ氏がティーチインに臨んだ。
第28回東京国際映画祭「アジアの未来」部門で上映された「三日月」でも知られる新鋭イスマイル・バスベス監督による本作は、バンドを組む3人娘、亡妻が忘れられない男、今の生活から逃げたい娼婦など、複数の人生がクロスする群像劇。「枕の上の葉」「スギヤ」のガリン・ヌグロホ監督が推薦する1本で、サニーは会計士役、サリムは新婦役として出演している。
「映画館にいたはずの自分が、まるで現地を旅したような感覚になった」という観客の感想を聞いたサニーは「本作のコンセプトは“ピクニック・シネマ”なんです」と明かした。「旅行をしながら映画をつくっていこうという試み。映画自体の大まかな主題はあるんですが、スクリプトはありません。『楽しく映画を作ろう』というのがテーマ」と説明すると、「長年の親友であるイスマエルと組んだグループでは、ワークショップのようなものを通じて、新たな監督を発見しようとしています。この“ピクニック・シネマ”の作り方で、新たな映画製作の手法を学んでほしいんです」と語っていた。
1台の使い古された車が様々な人生のひと幕に立ち合っていくというオムニバス的な構成について「各エピソードに共通する要素はありますか?」と問われると「劇中で描かれるエピソードは、イスマイルの個人的なメモなんです」とサニー。「インドネシアの経済、政治、社会文化といったことに対する個人的な表明です。重要なファクターとして、農民がエピソードを貫く線、そして中古車が人々を見る“目撃者”として登場しているんです」と述べた。さらに「中古車は左ハンドル、軍用車のようにも見える」と指摘されると「イスマイル自身が、インドネシアの歴史をどう見ているかという点に深く関わっています」と切り返していた。
ティーチインの終盤、スケジュールの都合で来日を果たせなかったバスベス監督に代わり、妻であるアングラヘニ氏が「日本の観客の皆様にも、作品のメッセージが伝わると嬉しい。劇中で描かれるインドネシアの状況、そしてインパクトをわかって貰えたら」とメッセージを伝えた。一方、バスベス監督と初タッグを組んだサリムは「彼はとても頭が良くてユニークな人で、以前から大ファンでした。(バスベス組に)生きている間に絶対に参加したいと思っていたので、今回夢が叶いました」と胸中を吐露していた。
第30回東京国際映画祭は、11月3日まで開催。
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