桃井かおり×イッセー尾形 異国の地で夫婦役「できるべくしてできた映画」と歓喜
2017年6月25日 10:00

[映画.com ニュース]桃井かおりとイッセー尾形が、アレクサンドル・ソクーロフ監督の「太陽」(06)以来2度目の映画共演を果たす、日本とラトビア初の共同製作映画が公開する。桃井とは3度目のタッグとなるラトビア出身マーリス・マルティンソーンス監督の新作で、国際派俳優ふたりが世界遺産の街リガと、姉妹都市にあたる神戸市で奏でる大人のおとぎ話だ。舞台でも長年夫婦役を演じてきた桃井と尾形が、息の合った掛け合いで作品を語った。(取材・文/編集部 写真/間庭裕基)
とあることから自分の殻に閉じこもってしまったケイコ(桃井)は、着物ショーに参加するために神戸を発ち、導かれるように北欧の地、ラトビアの首都・リガを訪れる。そこで、過去の震災で行方不明になっていた夫(尾形)と不思議な再会をする。
桃井 言葉が通じないから、監督と言葉で闘わなくて済むっていいことなんです。まず、やってみせるというやり方。主要なセリフと意味はわかっているので、あとは私たち夫婦に任されました。そうやっていくなかで私たちの中で発見したのは、夫婦の口げんかが相当おいしいということ(笑)。
イッセー 長年舞台で夫婦をやっていて、思い出すと口げんかする作品が多かった。でもそのほうが活気付くんだよね。お互いが信頼できているからこそのキャッチボール。今回のラトビアでの撮影もそこに落ち着いていきましたね。そうすると監督は日本語は逐一わかるわけではないけど、僕たちが発しあうものを感じてくれた。
桃井 私たちの熱気や温度みたいなものをキャッチしてくれたから問題なかった。監督があらかじめ用意した台本とはぜんぜん違う編集になっているし、撮影はきっちりした黒澤組より厳しい画角で撮っていたし、みんながそれぞれの「Magic Kimono(原題)」という考えを持って全速力で突っ走ってやっていた。その方角が全部違うところが素晴らしかった。
イッセー 編集でいくつの可能性があるんだろうって思わされましたね。でも監督は最初の作りたかった原点はどこかというものをいろいろ思いながら編集したんだと思うんです。そう考えると、「好き」って感じられる映画になりました。
桃井 「好き」って感じるっていうのはすごくあたってる気がする。

桃井 いえいえ、私が世界中に一番紹介したい俳優が尾形さんなんです! だから、私も監督とは3本やっているので、紹介するのはすごくよい俳優でないとダメなんです。でも、ラトビアに来てもらわなきゃいけないし……だから、イッセーさんを口説くのが大変だぞ。と思っていたら、すぐにオッケーくれて(笑)。
イッセー 信頼しているんです(笑)。撮影ではリハーサルを繰り返していい物を作るのではなくて、ずっとお互い高めておいて、1回でパッとやるのが良かったですね。
桃井 私たち、同じことは2度やらないんです。飽きるから。慣れてしまうし、芸を見せるだけになっちゃうので、その時生まれたものをお互いに、渡しあって、蹴飛ばしてもらわないといけないので。だから1回目のショットが使われることが多いですね。
イッセー 2回目は確認になってくるんですけれど、初回の説明つかないエネルギーの方が説得力があるんです。静かですが良質な作品に出られてよかったという気持ちで一杯。3年ぶりの再会で撮った映画ですしね。
桃井 この時期の私たちでなくてはできない、少し緩んでる感じもおいしいと思う。もう少しきっちり作り上げてしまうのは簡単なんだけど、それをしなかったのは大人っぽいなと。
イッセー 台本もよくわからないのに、これ以上やっちゃいけないと、妙な基準が生まれてくるんです。それはふたりでやってきた歴史もありますし、この映画自体のイメージもある。そういうことも、監督さんもリガの町もやさしく包んでくれました。
桃井 喪失感とか、失ってしまうことのさみしさ、それどうにかしたいね、って言う感情をみんなが共有していて、戦争で侵略されたラトビアという国の歴史も描いている。何万人と殺されて、再びまた手を繋いでいく。不条理な戦争を受け入れて、侵略されながら、生き延びていくということを経験している国と、私たちが抱える地震や津波。20年たってまだすべて元には戻らないけれど、そこにいる人たちが少し癒され、生きていく元気を身につける話なんです。
桃井 夫婦役以外で程よい年頃の男女が演じられる役があればいいのに。私が男になる?
イッセー 金貸し婆さんと、借りた爺さんとか(笑)。
桃井 でも、夫婦がやれる相手ってなかなかいないのよね。
イッセー 舞台でずっとやってきたから、それが大きいね。これはできるべくしてできた映画。なんか監督には申し訳ないけど、我々ふたりの喜びですね。
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