「カップルのような関係性だった」マイク・ミルズ、新作「20センチュリー・ウーマン」モデルの母を語る
2017年6月2日 19:00

[映画.com ニュース]「人生はビギナーズ」のマイク・ミルズ監督が自身の母親や姉をモチーフに描いた最新作「20センチュリー・ウーマン」が、6月3日から公開する。アネット・ベニング、グレタ・ガーウィグ、エル・ファニングらの共演で、15歳の少年ジェイミーのひと夏の成長物語を描く。来日したミルズ監督が、自身に多大な影響を与えたという母親との関係を語った。
アネット・ベニングが演じる55歳のドロシアは、パイロットにあこがれ、自由な魂を持つ自立したシングルマザー。劇中でジェイミーは、母親と姉をはじめとした女性たちとの生活の中で、フェミニズムを学び、男らしさを模索していく。
「私の母親は1925年生まれの力強い女性でした。彼女はフェミニズムという言葉が生まれる前から、フェミニズムを実行していたような人。社会に縛られず、短髪でパンツをはき、父以上に男らしい女性でした。父はゲイで、姉がふたりいて、とても女性の力が強かったのです。家族の中で、フィックスされた男女の役割がなく、常に流動的でした。そんな母親のことを描くのは大変だと思っていました。彼女はハンフリー・ボガートが大好きだったので、彼が出ている作品をたくさん見たら、母自身がボガートのようだった。その時、ジェンダーというのは、生まれ持ったものというよりは、後から何かマスクのように被ったり外したりできるものなのではないかと思ったのです」

劇中でのドロシアは、過保護に思春期のひとり息子の行動を制限するような母親ではなく、息子と対等な人間として描かれている。「自分もジェイミーのような子供でした。シングルマザーではありませんが、父の存在感が薄い家庭だったので、母子というよりは、カップルのような関係性でした。どちらかというと、いつも息子の僕が母の面倒を見たり、気を配ったりするような関係でしたね」
ミルズ監督が母に反抗したことはほとんどないというが、職業選択については、自立できるよう口うるさく言われることもあったそうだ。「母は大恐慌を経験しているので、お金のことに関してはとてもシビアでした。ちゃんと自分が自活できるような仕事につきなさいと言われていました。美術学校に通っていたので、『それがちゃんとお金になるんでしょうね』と何度も尋ねるような堅実な人でした。個人的なことについては口出しされませんでしたが、職業については本当にいろいろと言われましたね」
映画のほか、音楽、写真、グラフィックとマルチアーティストとして活躍、芸術と商業性をバランスよく両立し、ジェンダーレスな作品を生み出すミルズ監督の卓越したセンスには、母親の助言も影響しているのは明らかだ。なおこの取材日、ミルズ監督が女性ばかりの記者たちに率先してコーヒーを注いでくれたことをここに記したい。
「20センチュリー・ウーマン」は、6月3日から全国公開。
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