木村拓哉&三池崇史監督「無限の住人」で示した“万次道” 飽くなき追求は次のステージへ
2017年4月30日 11:00
[映画.com ニュース] 「武士道と云ふは、死ぬ事と見つけたり」。江戸時代中期に書かれた「葉隠」は、死を内包した熱き生を全うすることを説いている。しかし木村拓哉は、映画「無限の住人」(4月29日公開)で、死をも超越したすごみを見せつけた。そこで体現したのは、全身を刃に貫かれようとも愛する者のために生き続ける、言うなれば“万次道”だ。(取材・文/編集部)
時代劇の枠を超えて人気を博した沙村広明氏による同名漫画を、木村と鬼才・三池崇史監督のタッグで実写化。“血仙蟲”を埋め込まれ、不死身の肉体を手に入れた万次(木村)は、50年前に殺された妹・町と瓜二つの少女・凜(杉咲花)の用心棒を引き受ける。天津影久(福士蒼汰)率いる「逸刀流」との壮絶な戦いに明け暮れる日々を経て、常闇の生に飽いた万次の心に、特別な感情が芽生えていく。
木村は、「映画監督という仕事は画家のよう。この画を描くと決めたら、描き切るまで自分を削るんです。三池監督は、今回『無限の住人』を描きあげた。そこに自分が画材として選んで頂いたという感覚が、三池組に参加させて頂いて思ったことです」と、三池監督に全幅の信頼を寄せる。
一方で三池監督いわく、木村と万次が出会ったことは、奇跡的かつ運命的であるという。「万次は、自分のものさしで価値を感じるものを見つけ、命をかけていくんです。スーパーアイドルとして役割を果たしながら生きていく木村拓哉と、すごくリンクするんです。誰も味わったことがない、木村拓哉にしか見えていない世界が、明らかにある。不老不死の万次にしか見えていない世界もあり、それも自然にリンクしています」
そして万次が絶えず繰り広げる死闘の数々は、見る者に生と死の意味を問いかけ続けていく。同じく不死身である閑馬永空(市川海老蔵)、残忍な尸良(市原隼人)ら曲者が続々と登場し、まさに“ボスラッシュ”の様相だ。格別な印象が残った対決を聞くと、三池監督は剣劇の枠を逸脱した衝撃が走る「木村拓哉と市川海老蔵の戦い」を挙げた。「お互い死を恐れずにむちゃくちゃにぶつかり合っていきますが、本音のところでは死を求めている。『なまなかには、死ねんものだな』という市川海老蔵のセリフが、非常に染みてきます」と述べる。
木村も「海老蔵との向き合いは、また違った趣がありました」と同調し、もうひとつ、映画冒頭の“100人斬り”を挙げる。100人の荒くれ者に囲まれた大立ち回りが、モノクロで映し出される場面だ。「監督がスタッフさんに『今、何人斬った?』と聞いているのを耳にしたんです。助監督が『23人です』、監督は『じゃあ、あと77人だね』。なるほど、映像の編集によって100人斬りをするのではなく、そのものを撮影するのかと納得できて、簡単に腹をくくることができたんです」
死闘のたび、万次は返り血なのか、自らの出血なのか判別できぬほど赤黒く染まっていく。木村もまた、日を追うごとに打撲や切り傷などで満身創痍になり、ついには右ひざ靭帯を損傷してしまう。100人斬りは、その後に撮影されている。激痛に耐えながら何度も踏ん張ったが、「ベストコンディションではなかったので、とても悔しい部分です」と心残りを打ち明けた。
しかし三池監督は、木村の精神力に度肝を抜かれた。「普通に歩くことも困難な状態で、本番のカットがかかった瞬間に崩れ落ちてしまうほどだった」と説明し、「本番中、木村さんは本当に痛いわけです。手首を落とされて『うらあ!』って怒るのは、もちろんお芝居ですが、悪いコンディションでもプラスアルファの感情をいかすことができる、そんな強さがある」と舌を巻いた。
2016年の「SMAP」解散は、日本中に衝撃を与える出来事だった。人生の重大な転換期に「無限の住人」を経験したことに、木村は「毎日、エネルギーをすべて出し切らせてくれる、くたくたになれるキャラクターで、眠ることもできた。非常にバランスのとりづらい私事があったなか、この役と作品をやっていなかったら厳しかった」と思いを馳せた。
万次が凜に語りかけるセリフで、こんな言葉がある。「どんなにつらい思い出でも、覚えていれば、おかげでとんでもねえ力が出る。今回はそれで勝てた。だからお前も、父親のことを覚えておけ」。哀歓すべての記憶を力に換え、木村は次なるステージへ歩を進める。
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