マレーシアの国民的歌手アディバ・ヌール、ヤスミン・アフマド監督の思い出語る
2017年3月29日 17:00

[映画.com ニュース]マレーシアの女性監督ヤスミン・アフマドの遺作になった「タレンタイム 優しい歌」の劇場公開を記念し、本作のほかアフマド監督の作品に出演したマレーシアの国民的歌手アディバ・ヌールが来日、このほど作品やアフマド監督との思い出を語った。
2009年に51歳の若さで急逝したアフマド監督は、マレー系、インド系、中国系など民族や宗教が異なる人々が暮らす多民族国家マレーシアを映した長編6作品を発表。「細い目」(2004)では、東京国際映画祭最優秀アジア映画賞を受賞。遺作となった「タレンタイム」は、音楽コンクールに挑戦する高校生を描いた群像劇で、アフマド監督の最高傑作との呼び声高く、自主上映が続けられ、上映のたびに満席が続出。8年の時を経て初の劇場公開となった。
ヌールとアフマド監督との出会いは、広告業界で働いていたアフマド監督が手がけたCMに出演したことがきっかけ。それまで、本格的な演技経験はなかったが「『細い目』の脚本を渡され、私以外にイメージが浮かばないといわれたのです」と話す。
役者やスタッフとのコミュニケーションを重視した、現場でのアフマド監督の姿をこう回想する。「撮影前にセットにみんなを集めて、人生について語り合う時間をとります。彼女の家族の話などを交えながら、私たちの人となりを知るための情報を引き出すのです。その雰囲気はとてもカジュアルで、面接のような雰囲気ではありません。その声は温かいですが、監督としての仕事に切り替わったときには権威のある人間の声になっていると思いました。特にカメラの前では、個人的な彼女持っている温かさとプロ意識をはっきり切り離していました」
(C)Primeworks Studios Sdn Bhdアフマド監督の作品では、他民族、多言語国家のマレーシアで、登場人物たちが人種や宗教を超え、寛容さを持った人間関係が描かれている。「私たちマレーシア人はこういった社会のおかげで心をオープンにしていくことを学び、文化的に寛容になっていくことを感じています。もちろん、差別的な考えを持っていたり、ひとつの人種や宗教が他よりも優越しているような考えを持つ人もいますが、そういう人は減少している傾向にあります。今はインターネットを通して、世界の多様性を知ることができるからです。また、学校教育でも多様な文化の人たちと共存することを学んでいるので、宗教や人種、言語の違いに心を開くことを幼いころから訓練できていると思います」
アフマド監督亡き後も、マレーシア、シンガポールの若手監督が、その遺志を継ぐような作品を制作し続けているという。日本でも、行定勲監督がオムニバス作「アジア三面鏡 リフレクションズ」での短編「鳩 Pigeon」の数場面で、アフマド監督にオマージュを捧げた。「ヤスミンは今でも、若い映画作家たちに大きなインスピレーションを与え続けています。あるシンガポールの監督は、ヤスミンの仕事に敬意を表して私と仕事をしたいとオファーをくれました。他にもヤスミンの哲学に共鳴する監督はたくさんいて、ヤスミンの存在をひとつの礎として考えている人が多いと思います」
「タレンタイム 優しい歌」は公開中。
(C)Primeworks Studios Sdn Bhd
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