シリア移民描いたカウリスマキ作品がベルリンで高評価
2017年2月19日 14:10

[映画.com ニュース] ベルリン映画祭コンペ作品で評判が高かったのがアキ・カウリスマキの「The Other Side of Hope」だ。ヘルシンキにやってきたシリアからの移民の青年が、現地のセールスマンに出会い、レストランで働きながら行方不明の妹を探し続ける。テーマは現代的だが、映画のスタイルは紛れもなくこれまでのカウリスマキ風。寡黙で不器用な男たちの哀愁に満ちた物語が、ときに吹き出さずにはいられないユーモアを内包しつつ描写される。映画の完成度といい、社会的なテーマ性といい、ジャーナリストのあいだでは「他に金熊は考えられない」という声が上がっていた。
ホン・サンスがドイツと韓国で撮影した「On the Beach at Night Alone」、3年前に「グロリアの青春」がベルリン銀熊賞(主演女優賞に輝いたセバスチャン・レリオがトランスジェンダーのヒロインを描いた「A Fantastic Woman」、キンシャサを舞台に息子をひとりで育て上げるシンガーを描いたアラン・ゴミスの「FELICITE」あたりか。もっとも、今年の審査員長はポール・バーホーベンだけに「予測ができない」という声も多かった。
アウト・オブ・コンペでは、ベルリンがワールドプレミアとなったウルヴァリンシリーズの「LOGAN ローガン」が話題を巻いた。今回はこれまでとかなり趣向の異なるローガンの哀愁あふれるドラマ。だがいつにも増して激しいバイオレンス描写が多く、記者会見でもその点に話題が集中した。ジェームズ・マンゴールド監督は、「これは子供のための映画ではない。血やバイオレンスに満ちているが、それは暴力というものがもたらす結果を観客に考えてもらうことを目的としたからだ」とコメント。今回はローガンが出会う少女に対する、彼の父性的な面も描写されており、ヒュー・ジャックマンは「作品を観始めたときは、自分の責任の大きさを意識してちょっとナーバスになった。でも物語が進むにつれ自分の期待以上のものになっていて、このキャラクターが本当に好きだ、と感じるようになった。ホラーだろうが、ロマコメだろうが、スーパーヒーローだろうが、ウエスタンだろうが関係なく、ジム(ジェームズ・マンゴールド)はいかに物語を描くかを知っている監督だ」と讃えた。
アウト・オブ・コンペでは他に、人気英国俳優チャーリー・ハナムとロバート・パティンソンが共演し、英国の探検家で20年代にアマゾンで消息を絶ったパーシー・フォーセットの半生を描いたジェームズ・グレイの「The Lost City of Z」も注目を集めた。記者会見は終始リラックスした和やかな雰囲気で進み、主人公を演じたハナムが、「撮影自体がとてもアドベンチャラスだったよ。撮影中、監督の背中を大きなピンクの蜘蛛が登ってきて、それを見たクルーが仰天して追い払ったこともあった。刺されていたら30秒で死んでいただろう」とエピソードを明かすとグレイが、「そんなこと全然知らなかったよ、参ったね」と言って会場の笑いを誘った。パティンソンも、「僕はつねに冒険を求めているから、この映画は最高だった。ジャングルに何日も消えることができる機会なんて、そうそう訪れないからね」と、笑顔で語った。(佐藤久理子)
関連ニュース






映画.com注目特集をチェック

映画「F1(R) エフワン」
【語れば語るほど、より“傑作”になっていく】上がりきったハードルを超えてきた…胸アツをこえて胸炎上
提供:ワーナー・ブラザース映画

たった1秒のシーンが爆発的に話題になった映画
【この夏、絶対に観るやつ】全世界が瞬時に“観るリスト”に入れた…魅力を徹底検証!
提供:ワーナー・ブラザース映画

でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男
【あり得ないほど素晴らしい一作】この映画は心を撃ち抜く。刺すような冷たさと、雷のような感動で。
提供:東映

186億円の自腹で製作した狂気の一作
【100年後まで語り継がれるはず】この映画体験、生涯に一度あるかないか…
提供:ハーク、松竹

なんだこの映画は!?
【異常な超高評価】観たくて観たくて仕方なかった“悪魔的超ヒット作”ついに日本上陸!
提供:ワーナー・ブラザース映画

すさまじい映画だった――
【あまりにも早すぎる超最速レビュー】全身で感じる、圧倒的熱量の体験。
提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

“生涯ベスト級”の絶賛、多数!
「愛しくて涙が止まらない」…笑って泣いて前を向く、最高のエール贈る極上作【1人でも多くの人へ】
提供:KDDI

究極・至高の“昭和の角川映画”傑作選!
「野獣死すべし」「探偵物語」「人間の証明」…傑作を一挙大放出!(提供:BS10 スターチャンネル)