難民の玄関口、イタリア最南端の島で何が起きているのか? 「海は燃えている」監督に聞く
2017年2月10日 17:00

[映画.com ニュース]2016年第66回ベルリン映画祭金熊賞受賞作で、第89回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされた「海は燃えている イタリア最南端の小さな島」が2月11日公開する。ヨーロッパへ密航する難民や移民たちの玄関口であるイタリア最南端の小島、ランペドゥーサ島に1年半滞在し、ひっきりなしに到着する難民船の救援活動や、島の人々の生活を見つめたジャンフランコ・ロージ監督が作品を語った。
ランペドゥーサ島は人口5500人ほどの、静かな島だったが、これまでおよそ5万人の難民が到着し、2万7000人が命を失ったという。映画は12歳の少年サムエレの視点を通して静かに映し出す。
当初から子供を映したいと考えており、その理由をこう語る。「大人であれば当然、移民、難民問題を実感しているでしょうし、当然なんらかのリアクションを起こします。ある意味で、無知である子供を主人公に据えた方がより自由であると考えたのです」
詩情溢れる映像と共に、サムエレの生活や視点を通したメタファーが全編にちりばめられている。「少年の成長を捉えた映画であると捉えることもできますが、これはすなわち様々な問題に私たちがどう相対していくのか、という映画でもあるわけです。僕は、メタファーなくしてはストーリーはないと考えています。メタファーがなければ映画もないのです。政治を頭ごなしに、問題を押し付けるのではなく、ゆっくりとインタラクティブな形で考えていく、そういう作品を作りたいと思いました」

「僕にとって重要なのは、答えを見せるのではなく、問いかけをたくさんしていくこと。だから、そのためには情報をいかに抑えるか。これが僕のチャレンジでもあります。僕の映画は政治的ではあるけれども、それは政治を超えた意味での政治的、むしろエモーション、そういったものを通して、伝わればいいと思ったのです。ニュースで報道されているような声明のようなものを通して伝えたいわけではないのです。だから僕はジャコメッティの彫刻のように、いかに情報を少なくするか、とにかく壊れる寸前まで細く、削っていきたいと思っているのです」
現在、上陸した難民たちはすぐに抑留センターに送られるため、島民との接触はほとんどない。穏やかな島民の暮らしを映す一方で、救援活動にあたる人々の緊張感溢れる仕事ぶり、劣悪な環境の中で、海を越えてきた難民たちの悲劇もカメラは捉えている。「船上で信頼関係を築くことに心を配りました。命を落とした難民がいましたが、船長は『君はここで起きていることを世界に見せる義務がある』と言ってくれたのです。軍はそういったリスクを普通とりません。私は、あの島で24時間カメラを持って撮影できる許可をもらっていました。ネガティブに操作性を持った撮り方をしようと思ったらできたわけですが、完全に公平に撮ろうと思いました。そして、撮ったデータを見せてくれとも一切言われなかったのです」
ポピュリズムの台頭という点ではイタリアも他国と変わらないと前置きし、「ただ、移民政策についてはイタリアはがんばってきたと思うのです」と持論を述べる。「他の国のように、壁やバリアを作ってはいません。もっとできることはあると思いますが、ここ数年で45万人の難民を受け入れてきました。パトロール警備や救助、捜索にもきちんとお金をかけて、力を尽くしています。私はこの映画のために、海軍の船に乗りました。救助の連絡があれば、それがどのような人間で、何人乗っていても救いにいくという道徳的な義務を持っています。彼らがすごいのは、何カ月にもわたって、家族を置いて航海に出るのです。1カ月間乗船し、ものすごい高波の中で救助を実践することもあった。実際僕は軍のファンではないけれど、彼らのやっていることは本当に人道的で感動しました」と島での滞在と撮影を振り返った。
「海は燃えている イタリア最南端の小さな島」は2月11日から、Bunkamuraル・シネマほかで公開。
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