山岳カメラマンのジミー・チンが明かす「MERU」がサンダンス映画祭で評価された理由
2016年12月16日 19:30
[映画.com ニュース] 「ナショナル・ジオグラフィック」誌で活躍する山岳カメラマン、ジミー・チンが、第31回サンダンス映画祭(2015)で観客賞を受賞した監督作「MERU メルー」について語った。
“世界一の壁”と呼ばれるヒマラヤ・メルー峰シャークスフィンの登頂記録を、著名な登山家コンラッド・アンカー、レナン・オズタークと同行したチン自身が映画化。主観映像を盛り込み、標高約6250メートルからの眺望や過酷な旅の舞台裏をドラマチックに映し出す。
08年に1度目の登頂をした際は、映像に収めていたものの、特に映画化する予定はなかったという。映画化への野心が宿ったのは、11年に2度目の登頂を成し遂げたとき。「山頂でレナン(・オズターク)が言ったある言葉がすごく感動的で、聞いた瞬間『これってエンディングには最高だな』と思ったんだ。もちろん長編映画というのはすごく長いし、編集も大変だけれど、やってみたいと思った」。
登頂までの道のりは過酷だったが、映画作りもまた困難を極めた。「実はこの映画は、3度編集し直したんだ。1年かけたにもかかわらず、1度目の編集は全然うまくいかなかった。2度目も1年かけて編集をして、実はこの2バージョンともサンダンス映画祭に応募したんだが却下されてしまって、それで3度編集をやり直してようやく入選した。何度も途中で諦めそうになったよ。そういった意味では、この映画を作ったことと、山を登ることは同じだなと思った。映画も登山と同じぐらいのチャレンジ精神で挑んだよ」と共通項を語った。
映像の中には、オズタークが頭部に大けがを負い、入院する場面も描かれている。思わず目を背けたくなるような痛々しいシーンだが、チンは「あれはレナンの希望で撮影したんだ」と明かす。「実は、僕は撮影するつもりがなかったんだけど『撮影してくれ』とレナンから言われて、もしかしたらこれは彼の最後の望みなのかなと思ってね。とはいえ、病院での映像を使うことは考えていなかったから、フレームワークなど全然考えないまま撮影してたんだよ。だけれどそのあと見たらちゃんと撮られていて自分もうれしかったし、とても意味のあるショットになった」と感慨深げに語る。
また、思い出深いシーンとして、同行者のアンカーが登頂を成し遂げた際、亡くなったメンター(恩師)のマグス・スタンプへの思いを口にした瞬間を挙げる。「1番感動したのは、やはり山頂でコンラッドが、頭を雪面につけて『見てくれ、マグス、やっと登ったぞ』って言ったことだね。あの姿、あの言葉は演技でも何でもない。その光景にすごく僕は感動した。正直言って撮影しているときには色々なことが同時に起きてたから特に感情を入れずに撮影していたけれど、(登山から)帰ってきてから映像を見て、“これはすごく感動的だな”って思ったシーンだね」と振り返った。
「MERU メルー」は、12月31日から全国公開。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。