「私に構わないで」で演技初挑戦した女優はどのように“誕生”したのか?
2016年11月4日 17:00

[映画.com ニュース] クロアチアの観光地、ダルマチア地方に住む女性マリヤナは、強権的な父、無責任な母、障害を持った兄と暮らしている。窮屈な日々に嫌気がさしているマリヤナだったが、父が病に倒れ、否応もなく家族の中心となる。これが長編監督第1作となるハナ・ユシッチが選択肢の少ないヒロインの人生をシニカルなユーモアを潜ませつつ、細やかに描き出す。主演に抜擢されたミア・ペトリチェビッチは、演技初体験ながら存在感を発揮している。
ハナ・ユシッチ監督(以下、ユシッチ監督):2013年から脚本を書き始めました。その後ワークショップに参加して2015年に脚本が完成し、クロアチアの映画協会に採用されました。
ユシッチ監督:私はダルマチア地方出身で、自分が住んだ街を映像に焼きつけたかったのです。ヒロインのキャラクターは、好きな映画や本の影響を込めて作り上げました。私は家族の絆はとても重要なものだと思っています。私が生まれた街、近所の環境を一緒にしてひとつの映画にしたいと考えたのです。
ユシッチ監督:過酷な環境のもとで、追いつめられても強く生きる女性を描きたいと思いました。彼女の個性的な家族については、マリヤナを際立たせるために生み出した役ではありません。ユーモアもあり、ちょっとグロテスクな部分がある。それぞれのキャラクターに愛着があります。マリヤナに関しては落ち込むようなところもありながら、変なユーモアもある性格にしました。
ユシッチ監督:受け身というよりも、彼女には選択肢がないのです。自分が生きていくスペースを必死で探している。男性と関係を持つということも、家族が関わらない“居場所”を作りたくてした行動です。最後にバスに乗ることも、今まで行動できなかったことに足を踏み出した点で、それまでの自分を超えたといえます。マリヤナが大人になる大事なステップのひとつでした。
ユシッチ監督:原題は「私のお皿を見ないで」というのですが、クロアチア、特にダルマチア地方の住人は、他人を観察し悪気なく互いのことを詮索するのです。近所の誰が何をしたか、すぐに分かる状況です。だからヒロインはこのような場所に執着はありません。ただ自分の家族のいるところという意味でこだわりがあるのです。
ユシッチ監督:経済的には問題なく、クロアチアでもデンマークでも助成金の申請が通りました。ただ、私はプロの仕事にあまり慣れていなかったので、自分の居場所を見失いそうでした。ジョン・カサベテスを目標に撮り終えました。
ミア・ペトリチェビッチ(以下、ペトリチェビッチ):私は感情移入しやすい性質です。撮影が始まってまもなく自分の中でマリヤナが芽生え、彼女になっていきました。ひと言でいうと、マリヤナは寂しいヒロインなのです。
ユシッチ監督:女優が決まらないまま、バカンスを過ごしていた島で彼女を見かけました。イメージ通りの人だと思い何日間か遠くから見ていたら、彼女が荷物をまとめ始めたので、勇気を出して「映画のオーディションに来てくれないか」と伝えました。
ペトリチェビッチ:ちょうど大学を卒業したばかりでした。卒業したのが7月末で、映画の撮影が始まったのが9月7日でした。専門は建築で、今も建築事務所で働いています。
ペトリチェビッチ:監督に会って感じるものがありました。撮影を通して得難い友達になりました。映画経験は貴重でしたが、親友ができたということが私には嬉しいことでした。
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