黒沢清監督を世界最古の写真撮影技法“ダゲレオタイプ”で撮ってみると……
2016年9月17日 15:33
[映画.com ニュース] オール外国人キャスト、全編フランス語で製作された「ダゲレオタイプの女」の黒沢清監督と、来日中の主演俳優タハール・ラヒムが9月16日、都内のスタジオで映画の題材になった世界最古の写真撮影技法“ダゲレオタイプ”を体験した。
黒沢監督の海外初進出作で脚本も手がけた今作は、ダゲレオタイプの写真家ステファン(オリビエ・グルメ)と娘のマリー(コンスタンス・ルソー)、ステファンのアシスタント・ジャン(ラヒム)の3人による美しくも悲しい愛の物語が紡がれる。黒沢監督らしいホラー要素を含んだ幻想的な演出が随所にちりばめられている。
撮影を担当した日本人ダゲレオタイプ写真家・新井卓氏によれば、ダゲレオタイプは最古の写真撮影技法であるにもかかわらず、「解像度が1番高いと言われている」のだという。露光時間を多くとるため被写体を長時間拘束しなければならず、銀板に焼き付けるスタイルから「大きなサイズは体力的に1日に1枚」というが、金でコーティングすれば200年ほどはもつというから驚きだ。
「脚本を書いている何年も前から新井さんのサイトを見て調べていた」という黒沢監督は、「表面の状態を均一にするため」(新井氏)、銀板を磨いてさらにバーナーで熱し、入念に準備を重ねる新井氏の一挙手一投足に興味津々。「作業1つひとつが儀式的で、緊張感が高まる」(黒沢監督)とうなっていた。撮影は、映画と同様に首を器具で固定した状態で行われたが、黒沢監督とラヒムはフラッシュのあまりの強さに「びっくりした」(ラヒム)、「フラッシュが強烈だった」(黒沢監督)と苦笑い。それでも、劇中で「魂が宿る」と言及されるほど鮮明かつ立体的な像が銀板に浮かび上がると、黒沢監督は「物質感があるから、自分がそっち側(写真の中)にいった感じがする」と感嘆し、ラヒムは笑顔で新井氏に拍手を送ったほか、携帯電話で熱心に写真を収めていた。
ダゲレオタイプを自分で初体験したという黒沢監督は「おごそかな空気になりますね。レンズに顔が何重にも映っていて不思議だった」とインスピレーションを受けた様子。「ダゲレオタイプは水に入っているときが1番きれい」「(その人自身が写真の)中に閉じ込められているみたい」と語る新井氏の言葉に聞き入っていた。なお、黒沢監督と新井氏は10月3日に行われる本作のトークイベントで再び顔を合わせる予定だ。
「ダゲレオタイプの女」は、10月15日から全国公開。
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