河瀬直美監督、開催中止の危機を乗り越え「なら国際映画祭」で世界に日本文化を発信
2016年8月2日 18:54
[映画.com ニュース]奈良県在住の河瀬直美監督がエグゼクティブディレクターを務め、2010年から隔年開催されている「なら国際映画祭」の本年度のラインアップ発表会が8月2日、東京・日本橋の奈良まほろば館であり、河瀬監督がプロデューサーを務め、藤竜也が主演する映画「東の狼」(キューバ出身のカルロス・M・キンテラ監督作)が「NARAtive(ナラティブ)」部門で上映されることが明らかになった。会見では、河瀬監督が本映画祭にかける思いを熱弁した。
今年で4回目を迎える本映画祭は、世界から応募される作品を選考するコンペティション部門をはじめ、国内外の若手監督と奈良を舞台とした映画を製作するプロジェクト「NARAtive」、子どもや海外の学生とのワークショップなど、映画の魅力を伝える多数の企画を実施。さらに今年は、河瀬監督が第69回カンヌ国際映画祭の「シネフォンダシオン」部門(学生部門)の審査委員長を務めた経験から、同映画祭とパートナーシップを組むことが決定し、国内外での注目度が高まっている。これを踏まえ河瀬監督は、本年度の柱は開催当初から掲げている「新しい才能の発見」に加えて、「『Road to Cannes』と名前を付け、日本から世界にはばたけるクオリティの作品を輩出することを一番の目玉にしている。ラインナップ上も、そのようなプログラムが散りばめられている」と解説した。
本映画祭は、3月に総事業費の3分の1にあたる補助金1260万円が奈良市議会で全額削除され、開催が危ぶまれるという事態に陥った。河瀬監督は、「報道の皆さんが存続の危機というニュースを出してくださったおかげで、一般からのレッドカーペットクラブ会員という1万円で支援できるものに、ニュースが出る度10人、20人が会員になってくださった。結果、現在600ちかい方が会員になってくださっている。一般の人からの思いで集まったお金で補てんされました」と感謝を口にする。そのうえで、「今年はピンチだったが、それがチャンスに変わって迎え入れる皆さんに『この映画祭よかったね』って言ってもらえるきっかけになれると思う」と期待を込めた。
これを踏まえ、河瀬監督は「心からのホスピタリティでお迎えしたい。人と人の心が交わって本当に温かい気持ちになる場面ってなかなかないのではないか。奈良という時間がゆっくり流れている場所で皆さんがそういう体験をされれば、かけがえのない場所になるはず。奈良は、そういう時間のなかに1300年という歴史が確実に降り積もっていて、世界遺産の仏像があちこちにある。文化、生活を紹介できることも映画祭のひとつの魅力。文化を真ん中に置いて、人々が違いを認め合えることこそが映画祭の醍醐味」と本映画祭にかける思いを語る。
さらに、「私たちの国・日本を誇りをもって発信していける場所を、私が生きているうちに作りたいなと思ったのがこの映画祭のきっかけ。ないものをねだるのではなく、あるものを発見して、深く掘り下げていくことで、奈良のみならず地方にいる人たちの勇気にもなれたら」と訴え、「自分たちの街を大切に思えたり、そこで子どもを育みたいなと思う人たちが増えることこそが、力になる。その力になれたらいいなというのも映画祭の使命かなと考えています」と言葉に力を込めた。
「第4回なら国際映画祭2016」は、9月17~22日に奈良市ならまちセンター、春日野園地、奈良県文化会館、ホテルサンルート奈良ほかで開催。
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