鈴木亮平、2度目の変態仮面へ迷いなき決断
2016年5月14日 06:00
[映画.com ニュース]女性のパンツを頭から被った“変態”と名の付くヒーローを演じるこのシリーズを、鈴木亮平は迷うことなく自身のキャリアにおける「代表作」と言い切る。同時に「越えていかなきゃいけない壁であり、プレッシャーをかけ続けてくれる存在でもある」とも語る。
2013年、決して大きいとは言えない公開規模で興行収入2億円という異例のヒットを記録し、鈴木にとってもその後の飛躍へとつながる作品となった「HK 変態仮面」。あれから3年、続編となる「HK 変態仮面 アブノーマル・クライシス」が公開を迎える。
そもそも同シリーズ、鈴木の俳優仲間でもある小栗旬が原作コミックの映画化を熱望していた。鈴木に主演を持ちかけて、企画が始動。小栗自身も脚本協力という形で参加し、映画化にこぎつけた。間違いなく“イロモノ”に分類されるタイプの作品だが、鈴木は当初から「この作品は絶対にいける!」という確信を持っていた。
「何なんでしょうね(笑)? こういうヒーローが他にいないからでしょうか。いろんな要素が詰まっていて、ただのヒーローものじゃなくて笑えるんだけど格好いい! 一番特殊なのは、普通のヒーローは変身して服(スーツ)を着るのに、変態仮面は脱いじゃう。まあ、ハルクか変態仮面かですよね(笑)」。
一度ならず、二度までも異色のヒーローを演じることになったが、3年前とは鈴木を取り巻く環境は大きく異なる。NHK連続テレビ小説「花子とアン」などで全国区の知名度と人気を得たいま、イメージを考えれば断ってもおかしくはないが、鈴木自身「ヒーローと言えば、やっぱり3部作でしょ(笑)」と当初から続編を当然のことと考えており、躊躇なく再びパンツをかぶった。
「そこは迷わなかった。もともと、自分たちで始めたことですから、僕の状況がどう変わっても気持ちは全く変わらない。3部作構想に関していうと、この作品はアメコミのヒーローを意識した作りになっていますが、これだけアメコミ映画が世界で受け入れられているなか、21世紀の新しい日本発のヒーローとして対抗できるのは変態仮面だろうって思っています。そこで世界に売り出すなら、3部作じゃなきゃ格好がつかないでしょう(笑)? もちろん、それが実現するかは今回の作品次第ですが」。
役柄に合わせて肉体改造を行い、近年では作品ごとに体重を大幅に増減させたかがニュースにまでなる鈴木だが、最初にそうした役作りが注目を集めたのも、1年をかけて彫像のような肉体を作り上げた「HK 変態仮面」だった。続編でも、前回以上の強く大きな肉体を拝むことができるが、一方で、緻密に役柄の内面を表現する“知性”を兼ね備えた鈴木が、“肉体派俳優”という一側面のみで注目を浴びるのは、何とももったいない気がする。
「そこは僕がどういう役を選んで演じてきたかというところに原因があるので、あまり気にしても仕方ないかなと思いますね。どうせなら、自分にしかできないと思える役を演じたいし、その過程で必要な作業のひとつとして体も作っていますし、大事なのはバランスですね。逆に、これだけ頑張って体を作り上げて、誰にもそれを取り上げてもらえなかったら寂しいですから(笑)」。
作品選びに関して「よく『選んでいない』と言われますけど、選んだ上でこれなんですよ」と笑う。
「どこかでいつも『この作品が最後になるかもしれない』という思いは持っています。言葉は悪いけど『今日、死ぬかもしれない』という思いは昔からあって、そうなった時に悔いを残したくない。精いっぱい生きたと思いたいし、だからこそ、全力で情熱を傾けたい」。
第1作の「HK 変態仮面」に出演する際は、数年はCMや堅い作品のオファーは来ないだろうと覚悟の上で臨んだというが、いい意味でそうした予想は裏切られた。翌年には「花子とアン」に出演し、その後も「天皇の料理番」など次々と話題作に参加し、いまや映画にドラマに引っ張りだこに。この3年ほどの時間の中での変化について、鈴木はこう語る。
「基本的に、自分のスタンスは変わってないですが、大きな役をいただくことが増えて、作品そのものに対する責任感は強くなったと思います。自分をどう見せるかではなく、作品をよくするために自分に何ができるのか? 作品が愛されなければ、どんなにいい芝居をしても意味がない。自分の存在感を消すことで作品が良くなるなら、迷わずそちらを取れるようになりましたね」。
では、視聴者や周囲の反応についてはどのように受け止めているのだろうか。
「そこは確かに大きかったです。僕自身、何かが大きく変わったわけじゃないのに、朝ドラの放送が始まった途端、急に周囲が変わるのを感じて、最初は受け止められない自分がいたし、そこに振り回されないようにとも思いました。ただ、それから少しして『天皇の料理番』のために半年にわたって減量しなくてはいけなくなったんです。その時期、他の仕事はしていなくて、食べ物を食べずにずっと自分と向き合う時間がありました。いま振り返っても地獄の日々ですが(苦笑)、一方で、ひとりで自分を見つめ直し、気持ちを落ち着かせることができたし、そこで地に足をつけることができたのは、すごく大きな経験でした」。
いま、こうして押しも押されもせぬ人気俳優になっても、この先、年齢を重ねていこうが「変態仮面」の存在の大きさは変わらない。いや、キャリアを積めば積むほど、大きくなっていくのかもしれない。
「全力でぶつかれば、人は認めてくれるってことをこの作品で学んだし、このキャラクターを超えるものを残していかないといけない。そうじゃなきゃ“変態”のイメージしかない俳優になっちゃう(笑)。そうやってイメージを常に上書きし続けて、世間が忘れたころにもう1作できたら最高ですね!」
「HK 変態仮面 アブノーマル・クライシス」は5月14日から全国で公開。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。