【世界の映画館めぐり】ベトナム・ホーチミンのシネコンは韓国資本が圧勝 レイティングの規制はゆるめ
2016年5月4日 12:00
[映画.com ニュース] 外資系企業が続々進出し、著しい経済発展をみせるベトナム。映画業界では、国内3大メジャーシネコンのうち、2つが韓国資本で、年間上映本数が多いのはハリウッド映画、次いで韓国映画、そしてベトナム映画という順。ドラマやアクション、ホラーなど、幅広いジャンルの韓国映画が数多く公開されており、ベトナム・ホーチミンのシネコンでは、韓国コンテンツが圧倒的な存在感をみせています。
ベトナム映画業界最大手のCGV Cinemasは24の映画館、150スクリーンを運営する韓国系のシネコン。ベトナム国内初となるIMAX対応スクリーンを設置した施設を昨年オープンさせたのも、このチェーンです。2番目に大きなLOTTE CINEMAは、国内に22の映画館を保有しており、こちらも韓国企業。3位につけるBHD STAR CINEPLEXは、ホーチミン市内に5つの映画館を運営するベトナム資本の映画館ですが、数の上で2位に大きく水をあけられています(2015年12月現在)。
ベトナムにおける作品公開スケジュールは、日本とはだいぶ異なります。ハリウッド作品は本国より少し遅めで、日本よりは早めというのが大抵のパターン。日本で4月22日公開の「レヴェナント 蘇えりし者」は、ベトナムでは2月上旬公開でした。今回はその初日の様子をレポートします。
訪れたのは、CGV Crescent Mall。日本人ファミリーが多く住む高層マンションが集まる、ホーチミン7区にあります。ここは韓国人が多いエリアとしても知られており、商業施設がひしめき合うホーチミン1区に比べ落ち着いたレジデンシャルエリア。映画館は区内最大のショッピングモール内にあり、アクセスも抜群です。
映画館入り口では、「デッドプール」「カンフー・パンダ3」をはじめとした新作映画のパネルが出迎えてくれます。この時2月の旧正月シーズンということもあり、新年のシンボルであるポピーの花がいたる所に飾られていました。レオナルド・ディカプリオのシリアスな写真が祝賀デコレーションに寄り添う様子は、ベトナムの映画館ならではという印象です。
チケット売り場のスタッフは3人。上映時刻直前、10人ほど並ぶ客の列を目にしても焦らない点にも、のんびりとしたベトナムらしさを感じました。結局、上映時刻を5分過ぎてからチケットを購入し中へ。空いていたせいなのか、客全員が中央のセクションに固められました。おそらく清掃範囲を狭めておきたかったのではないかと思われます。
「レヴェナント 蘇えりし者」は、日本ではR15+です。しかしこの日の客層をチェックしてみると、幼い子供を連れたファミリー層が約半数。残り2割がそれぞれカップル、友達同士のグループで、1人客が1割ほどでした。基本的にテレビで映画が放送される際、ベトナムでは子供にふさわしくないと判断されたシーンはカットされます。映画館上映でも同様の決まりがあるそうなのですが、本作はオリジナルのまま、そして子供にもオープンに上映されていました。
この点についてベトナム人に聞いてみると、実はその判断はあいまいなのだそう。日本の厳しさに比べると、だいぶ柔軟だということでした。映画に限ったことではありませんが、こういうおおらかな対応もある種、ベトナムらしさだと言っていいかもしれません。
上映中は、会話をする客も多く見られました。騒ぐという程ではないものの、静かにしなくてはいけないという認識が薄いよう。また本編終了後は即座に離席が当たり前のようで、エンドロールまで余韻に浸る客は物珍しく見られ、客が残っていてもお構いなしの様子で清掃が開始されました。
この日のチケット料金は11万VND。日本円で約550円。公開初日は高めに設定されることが多く、これは割高な値段です。平均は2Dが6~10万VND(約300~500円)で、3Dが10~20万VND(約500~1000円)。ベトナム人に人気のジャンルはコメディで、ベトナム映画ではホラーやアクション作品でもコメディ要素が盛り込まれることが多いそうです。
言語に関しては、英語映画の場合はオリジナル音声に、ベトナム語字幕が付きます。韓国映画はオリジナル音声に、英語とベトナム語の字幕。日本語字幕が付く作品はありませんが、日本企業の進出に伴い、ホーチミン市内で働く多くの人が、日本語で多少のコミュニケーションができるようでした。劇場では、ポップコーンやドリンクの販売もありますが、この映画館近くの店舗で販売されている餅菓子、MOCHI SWEETSが観客の国籍を問わず人気でした。(奥浜アリサ)
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