「なけもしないくせに」井上真行監督、今後も「何か残る映画を作り続けたい」
2016年4月27日 22:00

[映画.com ニュース] 映画や演劇、俳優養成の専門学校ENBUゼミナール主催のシネマプロジェクト第5弾として製作された、井上真行監督の新作「なけもしないくせに」が4月23日から新宿K’s cinemaで公開され、25日の上映後に井上監督と出演の池田大、品田誠がトークイベントを行った。
作品は、2009年「一秒の温度」でPFFグランプリと観客賞をダブル受賞し、14年「正しく忘れる」が劇場公開された井上監督のオリジナル脚本による新作。東日本大震災から数年が経ち、新しい孤立を感じている地方都市在住の人々と、東京オリンピック開催決定で沸き立つニッポンの現実を対比して描くロードムービー。キャストの多くはオーディションによって選ばれ、ほかに岡部たかし、徳納敬子、尾中琴美、三枝翠、加藤理恵らが出演している。
主人公・新一(池田)の親友を演じた品田が、今作の着想を井上監督に聞くと「元々は喫茶店のシーンを思いついて、知らない者同士がそこで一緒になり、急に旅に出ることになったら面白いと思ったんです。ロードムービーはどこへ向かうかが重要で、福島へ向かったらどうなるのかを考えていきました」と明かした。
死の強迫観念にとらわれ、窮地に追い込まれていく青年に扮した池田は「監督からは人間臭く、ダサく演じて欲しいと言われました。1カ月前からリハーサルを行い、何度もダメ出しをされましたが、気持ちだけはメチャメチャ込めた」と役作りを振り返った。
井上監督は、心気症やパニック障害を起こす人物が描かれることに関して「自分に近くないことを映画で描くことはできませんが、体験したことかどうかは説明すべきことではないと思う。嘘か本当かわからないドキドキ感がある方が好きです。(池田)大くんに演じて欲しかったのは、結局本心を言っている人。自分の映画の中では、そんな人と言葉を残したい。みんなが思っても言わないことを言う人はうっとうしいけど、それは凄く覚悟がいることで、言えないことを映画で残したかった」と作品に込めた思いを語った。
そして最後に「うっとうしい人物でもまわりまわって愛されるような、最後にはちょっとあたたかい気持ちになって欲しい。映画を作って嫌われてもいいと思っているので、何か一石を投じたい。見た人の中に何かしら残る映画を作り続けたいと思う」と今後の抱負を語った。
「なけもしないくせに」は29日まで新宿K’s cinemaで上映。
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