ポルトガルの鬼才ペドロ・コスタと青山真治が白熱映画談義!
2016年4月20日 14:33
ポルトガルのリスボンにかつてあったスラム街フォンターイーニャス地区に暮らす人々を追ったドキュメンタリー「ヴァンダの部屋」「コロッサル・ユース」で称賛を浴びたコスタ監督。最新作では「コロッサル・ユース」にも出演しているヴェントゥーラを主人公に、その移民体験や1974年のカーネーション革命での経験を、虚実を入り混じらせながら描いている。
青山監督はスラムの人々を描いた「ヴァンダの部屋」を見て「中上健次が描いた世界、“路地”を描いた作品に肉薄した映画が、世界の片隅から登場した」と衝撃を受けたことを告白。その後の「コロッサル・ユース」、そして最新作「ホース・マネー」は「中上が描いた世界の“その後”を地で行っている。中上の小説『奇蹟』と今回の映画は非常に近しい関係にあって驚きました」と語る。コスタ監督は中上の小説を読んだことはなかったそうで、すぐに翻訳版があるかを確認し「興味深いです。ぜひ読んでみたい」とうなずく。
ヴァンダやヴェントゥーラといった、スラムに暮らす人々についてコスタ監督は「彼らはあの地区に暮らす被差別民の王妃や王のような存在であり、矛盾を抱えています。貧しい暮らしをしていますが、“目に見えない黄金”を持った存在であり、野蛮で原始的である一方、非常に洗練され、暴力的であると同時に優しい人々なのです」と解説。青山がコスタ監督の言葉を受け「“持たない者”という言葉がふさわしい。ペドロの映画は常にそんな存在が描かれており、持たない者が作り出すズレを感じさせます。それは現代映画の最先端であるとともに非常に原始的でもあり、感動させられます」と伝えると、コスタ監督は嬉しそうな笑みを浮かべ「彼らから聖と俗の不思議な混交を感じます。青山監督が感じていらっしゃるように、物質性と神秘性を持ち合わせた映画こそ、自分もよい映画だと感じます」と語った。
さらに、青山監督はコスタ作品と巨匠ジョン・フォードの作品の類似性についても熱く持論を展開。一方、コスタ監督は自身がカメラで捉える女性たちの存在について、日本が誇る名匠・溝口健二の描く女性との共通点を感じていることなどを明かし、当初の予定を40分以上もオーバーする白熱のトークイベントとなった。
「ホース・マネー」は6月18日から全国で公開。
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