カフカ「断食芸人」を映画化 9年ぶり新作発表の足立正生監督に聞く
2016年2月26日 07:30

[映画.com ニュース]「幽閉者テロリスト」以来9年ぶりとなる足立正生監督の新作「断食芸人」が、2月27日に公開される。フランツ・カフカの同名短編小説を基に、舞台を現代日本に置き換えて再構成し、自由に拘束された現代人の生をえぐり出す物語だ。足立監督に話を聞いた。
街の片隅に座り込むひとりの男。男に興味を持った少年は、話しかけても反応せず虚空を見つめるだけの彼の姿を写真に撮り、SNSに投稿する。翌日から男の周りには、少年の投稿を見た者たちが続々と集まるように。人々は男の存在についてそれぞれ持論を展開し、やがて男は「断食芸人」に仕立てあげられていく。震災後の原発問題やイスラム国のテロなど、今の世界を取り巻く社会問題も物語に織り込んだ。
題材にカフカを選んだ理由を「もともと好きな小説のひとつであったのと、現在の逼塞した社会の中で、どう生きたらいいのかを考えた時に、その状況に匹敵するシチュエーションが『断食芸人』にありました。何も食べない、話さない、その上で自分の命をさらして、見世物にして生きている、こんな強烈なメッセージはない。その中身は不明だけれど」と明かす。

カフカの原作とともに、魯迅の言葉も取り入れた。「映画のナレーションが語るのは『阿Q世伝』『狂人日記』など。魯迅とカフカは同年代で、絶望と怒りを持っていた。その感情を魯迅はむき出しにし、カフカは内捻させている。2人には共通点があって、そこで言えるのが『絶望なんて甘い』ということ。生きていることの怨念みたいなものを訴えていると思う。それを僕は共通して受け止めて、映画にしないといけないと思った。それくらいしか、3.11以降に発言するメッセージとしては弱いだろうと。今、メッセージの何もかもが軽くなってきている時代なので、芸術で突き進むしかないと思うのです」
劇中には引きこもりや自傷癖のある若者を登場させ、「断食芸人」との言葉のない対話を試みた。「そういう若者たちが、何も食わない、話さない人間と、そこで何が通底できるのかを考えました」といい、原作とは異なる希望を残すようなラストに仕上げた。そして最後に、現代社会を生きる若者に向けて「作り終わって完成するのではなくて、映画館で見てもらってはじめて完成するのが映画。だから、こんな下品で乱暴な映画は嫌いだ、という意見があってもいい。事前に何も考えずに見て欲しいですね」とメッセージを寄せた。
「断食芸人」は、2月27日から全国で公開。
(C)2015「断食芸人」製作委員会
関連ニュース






映画.com注目特集をチェック

たべっ子どうぶつ THE MOVIE
【裏切りすんごい】キッズ向けとナメてたら…全然“甘くなかった”!!嘘やろ、こんな…ええんか…?
提供:クロックワークス、TBSテレビ

なんだこの強烈に面白そうな映画は!?
【尋常じゃなく面白そうな6つの魅力】予告だけで「めちゃくちゃ良さそう」が湧き上がる…観なければ!
提供:ディズニー

“ハリポタファン”に熱烈に推したい
【夢のような空間がここにある】ぜひ堪能してほしい特別すぎる体験だった【忖度なし正直レビュー】
提供:ワーナー ブラザース スタジオ ジャパン

“最高&最幸”の一作!
【過去最高の評価!最も泣いた!】ありがとう、そして…さようなら!? 結末は絶対に観て…!
提供:キノフィルムズ

地上波では絶対ムリな超過激作
【超暴力的・コンプラガン無視!】狂キャラが常軌を逸した大暴れ!!【敵の事務所にロケットランチャー】
提供:DMM TV