「神様なんかくそくらえ」監督が語るホームレスから転身した新進女優の魅力
2015年12月25日 17:00
[映画.com ニュース]ニューヨークのストリートで生きる若者たち。「神様なんかくそくらえ」は、ドラッグやアルコールにおぼれながらも、愛を求めてさまよう彼らのひりついた日常をビビッドに切り取った。第27回東京国際映画祭で弟のベニーとともにグランプリ、最優秀監督賞をダブル受賞したジョシュア・サフディ監督が来日し、思いを語った。
ホームレスの少女ハーリーは、「愛の証に手首を切れ」と命じるエキセントリックな恋人イリヤを盲目的に愛し、抜け出すことのできない泥沼のなか、その日暮らしを繰り返している。この物語は、主演アリエル・ホームズの実体験に基づいている。偶然、街中で出会ったサフディ兄弟が「とてもスター性を感じました。表面的な言い方になってしまうかもしれませんが、独特の美しさがある人だと思いました。僕はダイアモンド地区で別作品のリサーチをしていたのですが、話を聞いてユニークさや力強さを感じたのです」と魅了され、すべてが始まった。
ホームズと親交を深めていったサフディ兄弟は、出会いから4カ月目でホームズに体験をつづるよう提案。完成した自伝を読み進め、「どこが映画的かと考えながら読んだのですが、入り口はイリヤでした」と引き込まれていった。本作では、イリヤはネガティブなドラマと結びついている。「『次にイリヤが出てくるのはいつか』ということ、ネガティブなドラマを求めていることに気が付きました。ある種破壊的な喜びというか苦しみであり、ダークなロマンスを求める部分はヘロインに似ているのかもしれません。魂を代償にしてハイを得るといったところに共感したのです」
本作は、ホームズをはじめとした演技未経験なストリートキッズが出演している。飾らない姿で、パワフルでいて刹那的なストリートの魅力である「中毒的とも言える」エネルギーを刻みつける。「彼らは、普通の人が欲しがる物質的な物ではなく、実存的な物を心から求めていて、日々の生活も自分たちで作っています。ドラッグが彼らのリアリティを作っている部分もありますが、自らドラマを生み出しているところに音楽的なものを感じました。僕らが純粋なものを引き出したいと本能的な部分で彼らを追い込んでいたので、彼らも与えてくれたのではないでしょうか」
なかでもホームズは「『今ここに存在する』というタイプで、嵐の中心にいることができる」人間だったという。「物乞いやSMクラブのS嬢などで生活しているのですが、そこにはいつもキャラクターを演じる要素があって、本当の意味でなりきることが必要になります。演技がヘタだと悪い批評が出るということ以上に、お金をもらえないという生死が関わるくらい非常に高いレベルが要求される中で、彼女の演技は面白くなっていったのだと思います」
そんなホームズの運命を左右するイリヤ役に、「どんどん入り込み自分を突き破っていく」役者を求め、「ものすごく役に入り込む」ケイレブ・ランドリー・ジョーンズが起用された。「不可思議な人物であるイリヤをしっかりと理解していて、彼を演じるために実際に路上生活をしましたし、本当にアリエルに恋をしていたと思います。こういう規模の映画に参加することも新鮮だったのではないでしょうか。自由を感じたかもしれないし、ストリートシアターのような楽しさも感じてくれたと思います。時間が経つほど、ケイレブがどれほど自分たちにすべてを与えてくれたのかということが分かり、本当に感謝しています」
「神様なんかくそくらえ」は、12月26日から公開。
関連ニュース
映画.com注目特集をチェック
関連コンテンツをチェック
シネマ映画.comで今すぐ見る
父親と2人で過ごした夏休みを、20年後、その時の父親と同じ年齢になった娘の視点からつづり、当時は知らなかった父親の新たな一面を見いだしていく姿を描いたヒューマンドラマ。 11歳の夏休み、思春期のソフィは、離れて暮らす31歳の父親カラムとともにトルコのひなびたリゾート地にやってきた。まぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、2人は親密な時間を過ごす。20年後、当時のカラムと同じ年齢になったソフィは、その時に撮影した懐かしい映像を振り返り、大好きだった父との記憶をよみがえらてゆく。 テレビドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカルが愛情深くも繊細な父親カラムを演じ、第95回アカデミー主演男優賞にノミネート。ソフィ役はオーディションで選ばれた新人フランキー・コリオ。監督・脚本はこれが長編デビューとなる、スコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
「苦役列車」「まなみ100%」の脚本や「れいこいるか」などの監督作で知られるいまおかしんじ監督が、突然体が入れ替わってしまった男女を主人公に、セックスもジェンダーも超えた恋の形をユーモラスにつづった奇想天外なラブストーリー。 39歳の小説家・辺見たかしと24歳の美容師・横澤サトミは、街で衝突して一緒に階段から転げ落ちたことをきっかけに、体が入れ替わってしまう。お互いになりきってそれぞれの生活を送り始める2人だったが、たかしの妻・由莉奈には別の男の影があり、レズビアンのサトミは同棲中の真紀から男の恋人ができたことを理由に別れを告げられる。たかしとサトミはお互いの人生を好転させるため、周囲の人々を巻き込みながら奮闘を続けるが……。 小説家たかしを小出恵介、たかしと体が入れ替わってしまう美容師サトミをグラビアアイドルの風吹ケイ、たかしの妻・由莉奈を新藤まなみ、たかしとサトミを見守るゲイのバー店主を田中幸太朗が演じた。
ギリシャ・クレタ島のリゾート地を舞台に、10代の少女たちの友情や恋愛やセックスが絡み合う夏休みをいきいきと描いた青春ドラマ。 タラ、スカイ、エムの親友3人組は卒業旅行の締めくくりとして、パーティが盛んなクレタ島のリゾート地マリアへやって来る。3人の中で自分だけがバージンのタラはこの地で初体験を果たすべく焦りを募らせるが、スカイとエムはお節介な混乱を招いてばかり。バーやナイトクラブが立ち並ぶ雑踏を、酒に酔ってひとりさまようタラ。やがて彼女はホテルの隣室の青年たちと出会い、思い出に残る夏の日々への期待を抱くが……。 主人公タラ役に、ドラマ「ヴァンパイア・アカデミー」のミア・マッケンナ=ブルース。「SCRAPPER スクラッパー」などの作品で撮影監督として活躍してきたモリー・マニング・ウォーカーが長編初監督・脚本を手がけ、2023年・第76回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリをはじめ世界各地の映画祭で高く評価された。
文豪・谷崎潤一郎が同性愛や不倫に溺れる男女の破滅的な情愛を赤裸々につづった長編小説「卍」を、現代に舞台を置き換えて登場人物の性別を逆にするなど大胆なアレンジを加えて映画化。 画家になる夢を諦めきれず、サラリーマンを辞めて美術学校に通う園田。家庭では弁護士の妻・弥生が生計を支えていた。そんな中、園田は学校で見かけた美しい青年・光を目で追うようになり、デッサンのモデルとして自宅に招く。園田と光は自然に体を重ね、その後も逢瀬を繰り返していく。弥生からの誘いを断って光との情事に溺れる園田だったが、光には香織という婚約者がいることが発覚し……。 「クロガラス0」の中﨑絵梨奈が弥生役を体当たりで演じ、「ヘタな二人の恋の話」の鈴木志遠、「モダンかアナーキー」の門間航が共演。監督・脚本は「家政夫のミタゾノ」「孤独のグルメ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭。
奔放な美少女に翻弄される男の姿をつづった谷崎潤一郎の長編小説「痴人の愛」を、現代に舞台を置き換えて主人公ふたりの性別を逆転させるなど大胆なアレンジを加えて映画化。 教師のなおみは、捨て猫のように道端に座り込んでいた青年ゆずるを放っておくことができず、広い家に引っ越して一緒に暮らし始める。ゆずるとの間に体の関係はなく、なおみは彼の成長を見守るだけのはずだった。しかし、ゆずるの自由奔放な行動に振り回されるうちに、その蠱惑的な魅力の虜になっていき……。 2022年の映画「鍵」でも谷崎作品のヒロインを務めた桝田幸希が主人公なおみ、「ロストサマー」「ブルーイマジン」の林裕太がゆずるを演じ、「青春ジャック 止められるか、俺たちを2」の碧木愛莉、「きのう生まれたわけじゃない」の守屋文雄が共演。「家政夫のミタゾノ」などテレビドラマの演出を中心に手がけてきた宝来忠昭が監督・脚本を担当。
内容のあまりの過激さに世界各国で上映の際に多くのシーンがカット、ないしは上映そのものが禁止されるなど物議をかもしたセルビア製ゴアスリラー。元ポルノ男優のミロシュは、怪しげな大作ポルノ映画への出演を依頼され、高額なギャラにひかれて話を引き受ける。ある豪邸につれていかれ、そこに現れたビクミルと名乗る謎の男から「大金持ちのクライアントの嗜好を満たす芸術的なポルノ映画が撮りたい」と諭されたミロシュは、具体的な内容の説明も聞かぬうちに契約書にサインしてしまうが……。日本では2012年にノーカット版で劇場公開。2022年には4Kデジタルリマスター化&無修正の「4Kリマスター完全版」で公開。※本作品はHD画質での配信となります。予め、ご了承くださいませ。