学生たちが社会的少数派と向き合う「ニッポン・マイノリティ映画祭」開催
2015年12月22日 07:30

[映画.com ニュース]日本大学藝術学部映画学科の3年生が企画から作品選定、宣伝、上映までを一貫して行う「ニッポン・マイノリティ映画祭」が、12月19日に東京・渋谷のユーロスペースで開幕した。過去から現在に至るまでの日本における偏見や差別をテーマに、「砂の器」「コタンの口笛」など16作品を1週間かけて上映する。
本映画祭は、同大学の授業の一環として毎年行われており、今年で5回目となる。映画祭を始めたきっかけについて、企画指導者である古賀太教授は、「うちの大学(映画学科)では、監督や撮影の仕方は教えてくれるけど、映画のプロデュースや宣伝といった、映画ビジネスのノウハウを教えてくれる授業はなかったんです。けれど、そういうことを学びたいという学生の声があり、それなら、学内ではなく一般の映画館を借りて、映画祭をやってみようかという話になりました」と企画当時の様子を語る。「お客様からお金をいただくわけですから、生半可な気持ちではできません。失敗したら(チケットの売り上げが劇場の1週間のランニングコストより下回ったら)そこで打ち切り。来年度は開催できません。だからこそ緊張感を持ちながら身をもって映画ビジネスを学べると思います」と、授業らしからぬシビアな条件下で学生たちが取り組んでいること明かした。
映画祭を企画した当初は不安もあったようで、「最初は大学側で予算を用意して、いつでも逃げられる準備はしていました(笑)」と振り返る。しかし、「現在の視点で1968年という激動の時代を再評価する」という主題で迎えた第1回「映画祭1968」は、約1600人の動員を記録し大成功。以来、多くの観客を動員してきた映画祭だが、成功の秘訣のひとつとして「学生には『サイトのデザインは見られればいいけれど、チラシ(ポスター)だけは必ずプロの人に描いてもらいなさい』と教えています。チラシが魅力的でないと、それだけで見てもらえない」と映画ビジネスならではの戦略を語った。
今回の企画発案者で代表の丸山雄也さんは、「日本人の多くの人は“単一民族”であるという認識があるけれど、実は自分たちの身近なところにも、各々の事情を抱えた人が抑圧されながら今を生きています。この映画祭を通して、目には見ない問題を考え直すきっかけになったらいいです」と考えを示した。また、「チラシやパンフレットに記載する言葉にはとても気をつけました。この映画祭で傷つく人がいては意味がないので」と、センシティブな題材ゆえの苦労も覗かせた。
ユーロスペースの支配人である北條誠人支配人は、学生主催の映画祭について「若いパワーがあって視点が面白く、一緒にやっていてとても楽しいです」と述べ、通常の映画祭より動員数が多い時もあるようで、「やはり年配の方が目立ちますが、学生が主体ということもあり、意外と若い人が観に来てくれるんです」と利点を挙げる。他にも、「(今回のようなテーマは)配給会社は避けるでしょう。それでもやってしまうところが学生のいいところ。考え方が柔軟です」と話す一方で、「もちろん、表現には責任がつきまとうことを学生には釘を刺しましたよ」と、いちビジネスとしての基本を諭していた。
開催当日は、性同一性障害のコンテンポラリーアーティストの半生を追ったドキュメンタリー「ピュ~ぴる」の上映後に、松永大司監督と主演のピュ~ぴるが登壇しトークショーが行われた。イスラエルで行われた映画祭で上映された際に、ピュ~ぴるの呼び方について物議を醸したようで、「観客同士、“he”と呼ぶか“she”と呼ぶかで喧嘩になっていた」と松永監督が打ち明けると、会場の空気は一変。緊張した雰囲気となり、今回のテーマが改めてデリケートな問題であることをうかがわせた。
「ニッポン・マイノリティ映画祭」は12月25日まで開催。
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