「みんなのための資本論」ロバート・ライシュ「経済問題の核心をつく重要な映画」
2015年11月20日 17:00
[映画.com ニュース] アメリカの経済学者ロバート・ライシュの講義に密着したドキュメンタリー映画「みんなのための資本論」が、11月21日から公開される。クリントン大統領政権下で労働長官を務め、格差社会の到来を予言し、アメリカの急速な格差の拡大に警鐘を鳴らしてきたライシュが作品について語った。
サンダンス映画祭審査員特別賞を受賞した映画は、教べんを執るカリフォルニア大学バークレー校の最後の授業に密着したドキュメンタリー。トマ・ピケティ「21世紀の資本」の翻訳者、山形浩生氏が字幕を監修した。
ライシュの著書「余震(アフターショック)」を基に、ジェイコブ・コーンブルース監督が映画化を提案した。「初めは懐疑的でしたが、出来上がった作品を見ると、わたしたちの社会でいま起きている経済問題の核心をつくとても重要な映画だと思いました。その問題とは過去30年以上に渡って拡大し続け、いま転換期に差しかかっている格差の広がりです」
そして、感想をこう述べる。「私は過去の30年で経済に起こったことを要約しようとし、その間に起こった一連の金融危機の中でどのようにして格差が広がっていくかを見極めようとしていました。そして私達は、それによって引き起こされた、大きな景気後退から回復しようといまだ奮闘しています。ジェイコブ監督は私の考えを、信じられないような強さと、映画でしかなし得ないやり方でスクリーンに置き換えてくれました。最初は不可能だろうと思っていましたけども(笑)」
映画では、過去数十年間の経済において何が起きたかを分析するためにライシュが使う「つり橋の図」がわかりやすく映像化されている。「ジェイコブ監督のアイデアでした。このグラフが本の最初にあり、それは1928年と2007年の経済のピークを表し、その後に経済危機がやってくる。それはつり橋のように見えて、はっきりと映画の道筋を示してくれました。この100年間の2つの最も大きい経済危機のまさに直前に、収入の多くは、1%の富裕層の手にあったことを示しています。つり橋の図に何かがあり、多くの興味を引きつけるだろうと思ったのです」
なぜ今、このタイミングでこの映画は作られたのだろうか。「2008~9年の金融危機を乗り越えることが私たちにとってすごく重要なことに思えたんです。経済にとって何が根本的に悪いことなのかを、人々はわかりはじめていると思います。人々はこれまでより熱心に働いているのに、うまくいっていません。私たちは、景気回復の途中にいると思われています。しかし私には、ごく少数のトップにいる人々が利益のほとんどを持ち出しているように見えるのです。もし金融危機の時にこの映画が完成していたならば、まちがいなく、この映画の焦点はウォール街と金融危機に合わせられていたでしょう。景気後退からの脱出を実現するためには、もっと基本的なやり方を、具体的に教えてくれるものが必要だと人々はわかり始めています。この映画がその役割を果たせればいいでしょう」
そして、ライシュはウォール街や政治家を非難せず、ダイナミックに物事を考え、それぞれの立場に立って理解することが大事だと解く。
「非難合戦は必要ありません。私は学生に、より物事を理解したいと思ったら非難合戦は止めるように言います。左側の人々は富裕層と企業を非難したいでしょう。右側の人々は貧困と政府を非難したいでしょう。しかしそれらの視点のどちらもあなたに伝わってこないでしょうし、正直でもありません。もっとダイナミックに物事を考え、それぞれの立場に立って理解しなければなりません。グローバリゼーションと技術革新が世界中に社会の分断、非常に大きな格差そして経済的不安定をもたらしたのと同じような影響を非難合戦は引き起こしませんでしたか? それは我々がゲームの規則を改めることができて、ずっと社会が繁栄できると思い込んでいたことによる失敗です。一歩引いて全体を見渡さない限り、このような状況から脱却する方法は見つからないでしょう。これからの成果は、知識を得た国民一人ひとりの肩にかかってくるのですから」
「みんなのための資本論」は11月21日、渋谷・ユーロスペースほか全国順次公開。
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