デジタル化がフィリピン映画界にもたらした若手インディペンデント作家の台頭と多様性
2015年10月27日 04:00
[映画.com ニュース] 第28回東京国際映画祭で10月26日、国際交流基金アジアセンターによるアジア映画の特集「CROSSCUT ASIA #2 熱風!フィリピン」部門のシンポジウム「『第3黄金期』とは何か? フィリピンの若手監督が語る」が開催された。「インビジブル」のローレンス・ファハルド監督、「バロットの大地」のポール・サンタ・アナ監督、両作の製作総指揮を務めた配給大手ソーラー・エンタテインメントのウィルソン・ティエンCEOが出席。デジタル化により、若手インディペンデント作家が台頭し、地域性や鑑賞スタイルに多様性が生まれているフィリピン映画界のいまを解き明かした。
フィリピン映画界では、“若き巨匠”と称される鬼才ブリランテ・メンドーサが監督デビュー作「マニラ・デイドリーム」を発表し、インディーズ映画の祭典シネマラヤ映画祭がスタートした2005年から現代に至るまでが「第3の黄金時代」と呼ばれている。若手監督たちは現在、映画祭の賞金や助成金を得るほか、個人から出資を受け、製作資金を調達しているという。
脚本家としてキャリアをスタートしたサンタ・アナ監督は、「デジタルシネマの登場により低予算ですむようになったおかげで、若手監督が実験的でアーティスティックな作品を製作できる環境が形成された」と解説。今年、メンドーサ監督とともにシナグ・マニラ映画祭を立ち上げたティエン氏は、来年の映画祭に向けすでに100本以上のエントリーがあることを明かし、ますます活気づくインディーズ界を印象づけた。
現在もメインストリームでは首都マニラを舞台にしたタガログ語の作品が多いようだが、デジタル化の影響で地方でも製作が活性化され、地域色が見られるようになったのも近年の傾向だ。ビサヤス出身のファハルド監督は、シネマラヤ映画祭の1期生として監督した、地元の方言イロンゴ語の短編「Kultado(原題)」にまつわるエピソードを披露。「字幕付きの上映だったので、まるで外国語映画のようでした」と冗談めかしたが、同作が審査員特別賞を受賞していることから地方文化への関心の高さがうかがえる。ティエン氏も、今年のシナグ・マニラ映画祭では異なる地方を舞台にした5作品を選出したといい、多様性を重視する姿勢を明確にした。
また、ハリウッド映画が主流だった市場でも、3~4年ほど前から国内映画の上映が増えるなど、インディペンデント映画の興隆とデジタル化の影響が顕著だといい、ティエン氏は新人監督がスタジオの出資を受けずに製作した作品がSNSの力で大ヒットを記録した例を挙げた。さらに、VODやインターネットテレビといった鑑賞方法の多様化も興行収入のアップに貢献しているという。
第28回東京国際映画祭は10月31日まで開催。
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