モフセン・マフマルバフ監督が来日 独裁者描く新作は「どの国でも自国のことと思えるように」設定
2015年10月21日 10:00

[映画.com ニュース] イランの名匠モフセン・マフマルバフ監督が来日し10月20日、都内で行われた新作「独裁者と小さな孫」の試写会イベントに出席。ゲストの河瀬直美監督とともに作品を語った。
ヨーロッパで亡命生活を続けるマフマルバフ監督が、平和への願い、未来への希望を込めた作品で、罪のない人々を処刑してきた冷酷な独裁者が権力を握るとある国が舞台。クーデターが勃発し、逃亡生活を余儀なくされた独裁者は、変装しながら幼い孫とともに国外脱出を図ろうとする。
9年前に、タリバンに制圧されたアフガニスタンの惨状を目にしたことが、本作製作のきっかけとなったが、その後「アラブの春」が起き、物語の舞台を架空の国に設定した。「どの国でも観客が自国のことと思えるようにした。かつても、これからも存在するすべての独裁者にあてはまるのです。日本の観客がこの映画を見て、誰を思うのかが楽しみです」とその意図を説明する。
もし自分が大統領や総理大臣だったら何をするかと問われた河瀬監督は、「日本の端から端まで歩いて回りたい。永田町の国会にいるだけではすべては見えないはず。奈良で映画を作ったり、子育てをしているが(中央との)距離感を感じる」と地方在住者としての意見を述べる。そして、「この映画でもプレジデントと呼ばれる人があちこちを回るさだめになるが、(自国のすみずみまで目をかける)自覚があったらそんな人生を歩まなくてもよかったのでは」とコメントした。
マフマルバフ監督の来日は今回で6度目。「ビジネス面を含めても日本人が一番正直で信用できる人たち」と話す。「70カ国以上を旅し、10カ国以上で映画を作ってきて、私は自分は地球人だと思っています。人々が感じることはみな同じで、言葉が少し違うだけなのです。映画人として文化を使って世の中を変えていきたい」と決意を新たにしていた。
「独裁者と小さな孫」は、12月12日から東京・新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開。
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