首藤康之、「愛と哀しみのボレロ」は「僕の教科書のような作品」
2015年10月18日 09:00
[映画.com ニュース]クロード・ルルーシュ監督が1981年に発表した「愛と哀しみのボレロ」デジタルリマスター版の4週間限定上映が10月17日、YEBISU GARDEN CINEMAで始まり、バレエダンサーの首藤康之を迎えたトークイベントが行われた。
ベルリン、モスクワ、パリ、ニューヨークを舞台に、第2次世界大戦前から戦中、そして1980年代へと至る中で、芸術家たちのドラマチックな人生模様を描いた3時間超の大作メロドラマ。モーリス・ラベル作曲、モーリス・ベジャール振付によるバレエの傑作「ボレロ」を舞う天才ダンサー、ジョルジュ・ドンの圧巻の舞踊シーンが絶賛された。
1960年初演の「ボレロ」は当初女性ダンサー向けに振付けられ、1979年にジョルジュ・ドンが男性ダンサーとして初めて旋律を踊った。リズムと呼ばれる群舞ダンサーの男女入れ替えなどもあったそうだが、「ドンさんが踊ることによって、性を超えて、男も女も関係ない、人間としての踊りになっていった」「僕が知る限り、男女の振付を変えずに最初から最後まで踊れる唯一の作品」と現代バレエの名作について説明した。
首藤はベジャール振付の「ボレロ」を踊ることを許されたダンサーの一人であり、生前のベジャールとの数々の思い出を語る。ベジャールの大半の作品の主題は「愛と死」で、「ボレロ」は「海」がもうひとつの大きなテーマだったという。ベジャールが団員たちと海水浴をした際に、女性ダンサーが海中から出てきた瞬間を見て、振付を思いついたというエピソードを明かし、「ベジャールさんは海は何か神聖なものが生まれ出てきて、帰っていくところだと考えていた」と話した。また、作曲者のラベルも海辺でのバカンスで「ボレロ」のリズムを作曲したそうだ。
「愛と哀しみのボレロ」で舞うジョルジュ・ドンの姿を「何千回と見ました」という首藤。映画では、アーティストたちの人間ドラマと共に激動のヨーロッパ現代史が描かれているが「舞踊の歴史にも、社会的な背景は切っても切り離せない」といい、「僕の歴史の教科書のような作品」と思い入れを語った。
「愛と哀しみのボレロ」デジタルリマスター版はYEBISU GARDEN CINEMAで上映中。