「ヒトラー暗殺、13分の誤算」監督、“消せない過去の重み”を語る
2015年10月16日 13:45

[映画.com ニュース]第1次世界大戦後から第2次世界大戦が終結する1945年まで、ドイツで独裁政治を行ったアドルフ・ヒトラーの暗殺を企てたゲオルク・エルザーの人生を描く「ヒトラー暗殺、13分の誤算」が、10月16日から公開される。第77回アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされた「ヒトラー 最期の12日間」(2005)に続き、ナチス・ドイツを史実に沿って描いた今作でメガホンをとったオリバー・ヒルシュビーゲル監督に話を聞いた。
39年11月8日、ミュンヘンのビアホールで毎年恒例の記念演説を行っていたヒトラーは、予定より早く退席した。そのわずか13分後、会場で時限爆弾が爆発し、8人が命を落とした。綿密に練られた計画に、犯人はイギリスの諜報員かと推察されたが、逮捕されたのは政治的背景のない家具職人エルザーだった。ヒトラーがもっとも恐れた“平凡な男”エルザーの人生と、揺るぎない信念を描き出す。
ヒトラーは、ユダヤ人や共産主義者、少数民族、同性愛者、障害者らを迫害し、約600万人ともいわれる大量虐殺を行った。ヒルシュビーゲル監督は、ドイツでヒトラーに関する映画が多数製作されることを「ドイツ人にとってもよりよいことだと思います」という。「生まれた世代を問わずに我々は『加害者の国』としての心を持っていなければ、感じてなければいけないと思います。自分たちの犯した罪と相対し、そして相対し続ける事が大切です」という言葉が、消せない過去の重さを感じさせる。

暗い過去に対峙する映画を製作することは、決して容易いことではない。「『ヒトラー 最期の12日間』は作らなくてはいけないと強く突き動かされて製作しました。ヒトラーを知るために何千時間も時間を割いて作りましたが、ナチスの思考であったり、第三帝国、ヒトラーの事は、見るもの知るものの全てがとても不快で嫌悪感を覚えたので、とても辛い作業でした。ですから、自分から撮りたいとは思いません」と本音を漏らす。しかし、今作もまた「脚本を読んだ時に、この作品は自分が作らなければいけない! という事を強く感じた」。
エルザーは女性に好かれ、音楽や自由を愛する平凡な男性だったが、自らが暮らす田舎町に徐々にナチスのファシズムが浸透し始めたことで、危機感を募らせていく。そしてヒトラー暗殺という世紀の作戦を、計画から実行までたったひとりで行った。ヒルシュビーゲル監督はエルザーを「人類の歴史においてもいい意味で例外的な人物だと思う」と分析する。
「自由であることが、美やクリエイティビティの源であると信じていた人間だと思うんだ。彼にとってみればナチスの体制が全く理解できなかったのだろう。すなわち管理、暴力、圧制というシステムが人の個性やクリエイティビティ、勇気を殺してしまう、としか思えなかったのだろう」
「行動を起こした彼を僕はとても尊敬している。と同時に行動できる彼は謎めいた存在でもあって、どうしてこんな勇気が生まれるのか。例えば二度と家族や友人に会えないというリスクがあっても行動ができるかといえば、僕にはそんな強さはない。そういった彼の謎に迫りたい、という思いもあった」と製作に至った理由を明かす。
実際に、近親者の多くがエルザーについて語りたがらなかったといい、「エルザーの出身地では彼は反逆者というレッテルを貼られ、一族が影響を受けてしまった。それは悲しいことに今日まで続いている」と嘆く。昨年ドイツのアンゲラ・ドロテア・メルケル首相が、エルザーを自ら戦争を阻止しようとした人物であると評価したが、ここに至るまでには暗殺事件から75年もの年月を要した。
またヒルシュビーゲル監督は、ヒトラーの支配化にあった当時のドイツの状況を「人間というものは、言われたとおりに動くことを好む人も多くて、ある種のシステムの中に身を置けば、秩序や自分の立ち位置がわかりやすいし、そこに居心地の良さも感じてしまうこともあるのではないだろうか」といい、だからこそ「従属する事を警戒しよう」と警鐘を鳴らす。
「日本人にはしっかり考えて欲しい。というのも日本もドイツと同じように言われたことに、流れに従属してしまう国民性だから。どんどん問いかけをし、何も考えずに受容する事をやめましょう。やめていこうよ! という事を感じて欲しい」
「ヒトラー暗殺、13分の誤算」は、10月から東京・TOHOシネマズシャンテほか全国で順次公開。
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