エミール・クストリッツァに見出された新鋭日本人監督、ベネチアで喝さい浴びる!
2015年9月11日 20:00

[映画.com ニュース] 「ビエンナーレ・カレッジ・シネマ」というカテゴリーは、まだあまり知られていないかもしれないが、若手の才能を発掘し支援するために、3年前に始まったベネチア国際映画祭のプログラムの一環である。世界中から集まったなかで選ばれた企画には15万ユーロの資金が支給され、作品を撮影することができる。そのプログラムに入選し、今年映画祭で披露された3本のなかの1作が、日本人として初めて当選を果たした。長谷井宏紀監督の「Blanka」だ。今回行われた3回の上映はいずれもほぼ満席。とくに5日の公式上映は入れない観客が出るなど、異例といえるような注目度となった。
イタリアのプロデューサーの指揮のもと、マニラを舞台にした本作は、ストリートで暮らす11歳の孤児ブランカが、密かに貯めたへそくりで“母親を買う”ことを思いつく物語。だが、盲目のギタリストと出会ったことをきっかけに、彼女の人生が変わる。もともと旅好きで10年ほど前からマニラを何度も訪れるようになった長谷井監督は、貧しい環境のなかでもたくましく生きるストリートキッズたちに触れ、彼らを主人公にした作品を撮りたいと思うようになったという。その後ブランカに扮したシデル・ガブテロ、実際に住所不定だったギタリストのピーター・ミラリとの出会いにインスパイアされ、ストーリーが形になった。もっとも、いざキャスティングの段階になったときは、本人たちの行方がわからなくなり、探し出すのに苦労したとか。「ピーターは探し出すのに1カ月かかり、シデルは遠い田舎にいた。一旦他の少女をブランカ役にキャスティングしたものの、家族の反対に合い、再度シデルにコンタクトをとったところ、たまたまマニラに引っ越したことがわかった。実際マジックのような出来事がたくさん起こった現場なんです」と語る。クルーはマニラ在住の撮影監督・大西健之以外、すべて地元のフィリピン人。ベネチアの上映では上映後、温かい拍手に包まれ、「パワフルでとても美しいストーリー」「少女とギタリストの触れ合いに心を引きつけられる」といった観客の声が聞こえた。

今回日本とは縁のない映画製作を行った長谷井監督だが、じつはその履歴もユニークだ。もともと映像作家だった彼は、偶然出会ったエミール・クストリッツァに短編作品「Godog」が気に入られ、彼の招待で2009年、クステンドルフ・フィルム&ミュージック映画祭に参加。みごと最高賞を受賞する。その後1年半ほど、セルビアのクストリッツァの村に滞在しながら脚本執筆に励んだ。クストリッツァをはじめ、アキ・カウリスマキ、ジム・ジャームッシュらが好きという監督は、「ネガティブなものは作りたくない。見る人に新しい価値観を提示するような、希望にあふれたものをこれからも作っていきたい」と語る。もちろん、今後は日本国内での制作も視野に入れたいとか。日本人離れした感覚を持つパワフルな行動派の監督として、活躍が期待される。(佐藤久理子)
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