宝田明、旧満州での戦争経験を振り返り、反戦への思い新たに
2015年7月24日 16:00

[映画.com ニュース]俳優の宝田明が7月23日、日本大学江古田校舎で行われた「ソ満国境 15歳の夏」トークショーに出席。同作に金森成義役で出演する三村和敬、松島哲也監督とともに反戦への思いを語り合った。
1945年夏、敗戦によってソ連と満州の国境付近に置き去りにされた15歳の中学生たちの苦難をつづった田原和夫氏の同名手記を映画化した本作。田中泯、上田耕一、そして本作が遺作となった夏八木勲といった名優たちに加え、金澤美穂、柴田龍一郎、清水尋也ら注目の若手俳優が多数出演している。
松島監督は、本作を製作した理由を「この映画では戦争の時代の15歳、そして福島から避難を余儀なくされた15歳というふたつの時代の15歳を描いています。この15歳という時はわたしにとっても非常に特別なもので、夢や目標について考えた時期でした。ですから、これからの15歳には悲劇を繰り返してもらいたくないという思いでこの映画を作りました」と語る。
旧満州・ハルビンでの戦争経験を持つ宝田は「監督からここでお話をしてほしいと言われ、わがことのようにうれしく、感動しました」と挨拶。「原作者の田原和夫さんは4つ上で、ほぼ同じ世代。満州で同じ空気を吸い、生活をしていた者として、この物語はわがことのように思えてなりません。勤労動員として送られた新京第一中学校の生徒たちがあんなご苦労をなさったとは。胸の詰まるような思いで映画を拝見しました」と沈痛な面持ちで語った。
さらに「先週はテレビ局の終戦番組の取材でハルビンに行ってきて懐かしいところを歩きました。かつて通った学校や住んでいたところ。ソ連兵に撃たれたところ。靴磨きをしていたところ。兵隊に殴られたりしながらタバコを売っていたところなども」と語る宝田の言葉に、三村も「街でタバコを売っていたら殴られたりとか、実際に経験した方のお話を聞いても信じられないという気持ちがあります」と驚いた様子をみせた。
「わたしは今までずっとノンポリでいたんですが、還暦を過ぎたあたりから役者である前に人間であれと思うようになった」という宝田。「人間の犯す大罪は戦争をおこすこと」という力強い言葉とともに、宝田の反戦への思いはさらに熱を帯びてくる。「せっかく憲法第9条で平和を尊びながら、もうすぐ骨抜きにされてしまう。きっと法案は多勢を頼りに通過するでしょう。今はそういう危険な状況であります。戦争というのは、のどもとを過ぎても忘れてはいけないもの。今、10歳の子は8年もすれば選挙権を持ちます。そのときに今の世界を振り返り、おじいちゃん、お父さん、なぜあのときに戦わなかったの? と若い世代からおしかりを受けることがないように頑張らないといけない」という言葉に会場からは大きな拍手が起こった。
今回の上映会では、映画の登場人物と同じ中学生から、旧満州にわたっていた宝田の同世代まで幅広い層が映画を鑑賞した。宝田も「こういう近しいところで皆さんと話し合うのが、こういう会場の良さ。これからわたしもできるかぎりこの作品の良さを宣伝していこうと思っています」と決意を語った。
映画「ソ満国境 15歳の夏」は8月1日から東京・新宿K's cinemaで全国公開。
フォトギャラリー
関連ニュース






映画.com注目特集をチェック

映画「F1(R) エフワン」
【語れば語るほど、より“傑作”になっていく】上がりきったハードルを超えてきた…胸アツをこえて胸炎上
提供:ワーナー・ブラザース映画

たった1秒のシーンが爆発的に話題になった映画
【この夏、絶対に観るやつ】全世界が瞬時に“観るリスト”に入れた…魅力を徹底検証!
提供:ワーナー・ブラザース映画

でっちあげ 殺人教師と呼ばれた男
【あり得ないほど素晴らしい一作】この映画は心を撃ち抜く。刺すような冷たさと、雷のような感動で。
提供:東映

186億円の自腹で製作した狂気の一作
【100年後まで語り継がれるはず】この映画体験、生涯に一度あるかないか…
提供:ハーク、松竹

なんだこの映画は!?
【異常な超高評価】観たくて観たくて仕方なかった“悪魔的超ヒット作”ついに日本上陸!
提供:ワーナー・ブラザース映画

すさまじい映画だった――
【あまりにも早すぎる超最速レビュー】全身で感じる、圧倒的熱量の体験。
提供:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

あなたがまだ出合っていない“人生の1本”
“生涯ベスト”の絶賛!笑って泣いて前を向く、最高のエール贈る極上作【1人でも多くの人へ】
提供:KDDI

究極・至高の“昭和の角川映画”傑作選!
「野獣死すべし」「探偵物語」「人間の証明」…傑作を一挙大放出!(提供:BS10 スターチャンネル)